18話

 なんと言うかそうと言うか。

 朝起きた、ある意味、最悪の目覚めだ。

 体はスッキリしているが、気持ちがどんよりしている。

「縁、起きろよー」

 と体をさする。

 触れた時すぐに異常が分かった。

 縁が震えている。

「ゆーくん寒い」

 弱々しい声を上げた。

 温度計を見るとそこには二十二の文字。

 寒いはずがないが、縁は毛布に包まりブルブルと震えている。

 俺は急いで体温計を持ってきて、彼女の体温を測る。

 その数字はとんでもない数字だった。

 三十九度。

 いや、四十度近い熱がある。

 これはおかしい。

「縁、何か寒い以外に症状はあるか?!」

「そんなの無いよーっ」

 症状なし。それなのに高熱。

 おかしい。

 まぁいい。いや良くない。

 どうしたものか、とにかく粥でも作って食べさせるか。

「縁。食欲はあるか?」

「うん」

「お粥作ってくるから待っててね」

 と部屋を後にする。

 なんと言うか、焦っている自分がいる。

 不自然な焦りだ。彼女の事だもしもの時は救急車を呼ぼう。

 そして、粥を作った。

 だが、縁の病状は急変していた。

 今度は暑いと言い始めたのだ。

「ゆーくん、頭ぼーっとする。冷たいもの食べたい」

 そして、不自然な事に手足が異常に温かい。

 俺はこんな病状な人と出会した事は無論、一度もない。

 そしてどうして良いのかもわからない。

 とりあえず、姉に電話しよう。そして助けてもらおう。

「もしもし、姉ちゃん。縁が大変なんだ! 朝から高熱を出して、最初は寒いって言ってて今は逆に暑いって言ってるんだけど。何か分かる?」

「高熱で暑いか。手足って温かい?」

「そうだね、温かい」

「それって、熱中症じゃないの? とりあえず部屋の中を冷やして、お茶でもスポドリでも飲ませたら?」

「熱中症? そうか分かった。はい、ありがとう」

 と電話を切る。

 そして、クーラーの設定温度を最低にして、俺はコンビニまで走った。

 スポドリを買って急いで帰る。

 帰った頃には縁は寝ていた。

 俺は凍えそうな部屋から出て、自分の朝食を作る。

 なんと言うか、久しぶりに食べる一人飯は寂しく感じた。

 この前までは、一人飯だけだったのに。

 そんなことを思いつつ食事を口に運ぶ。

 食べ終わった食器すらも片付けずに、縁の部屋に向かう。

 変わらず、縁は寝ていた。

 しかし、置いておいたスポドリは半分近く無くなっていた。

 縁は吐息を吐いて寝ている。

 俺は心配で心配で縁の側から離れなかった。

 だが、いつの間にか寝てしまっていた。

「ゆーくん。ゆーくん」

 そんな声で目が覚める。

「縁、大丈夫か?」

「もう大丈夫、熱も下がったみたいだし」

「良かった!」

 と縁に抱きつく。

「ゆーくん、私ね、夢を見たんだ。ゆーくんと一緒に結婚式をする夢、本当にできたら良いなーなんてね」

 そんな夢を語られたら本当にしてあげたくなるだろ。

「じゃぁ、本当にしよっか」

 なんと言うか、余計な事を言った気がした。

「本当やったー! ずっと一緒にいようね」

「だね」

 と会話を交わす。

「なんかお腹空いちゃった夕飯は何?」

「縁が好きなもの作ってあげるよ。何がいい?」

「うーん。そうめん! そうめんが食べたい!」

 ある程度、この家に何かあるか把握しているが、そうめんはなかった気がする。

「そうめんか。なかった気がするから買ってくるね」

「待って! 私も行きたい」

「まだ、熱も残っているだろ? 寝た方がいいんじゃないか?」

「確かにそうだけど。でもゆーくんと一緒に居たい」

 結局一緒にスーパーに行く事になった。

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