15話
その後、俺は縁と初めて手を繋いだ。
その手は離すといった言葉を知らず、握ったままだった。
俺はそれに答えた。
握り続けた。
温かく柔らかいその手は俺も物より一回り小さく少し握りにくい。
だがそんな事は関係ない。
ぼーっとテレビを眺める二人の影。
好きでもない番組をただひたすらに眺め続け、時を過ごした。
まるで、授業中、窓の外でやっている体育の授業を眺めるように、時は刻々と過ぎていく。
時は不思議だ。
好きな人と居るだけで早く過ぎる。逆に一人寂しく泣く時間は対に当たる。
面白くもない物語を読むように。
つまらない、映画を見るように。
動かない動物を見るように。
時は過ぎた。
面白い事に、もうすっかり日は落ち辺りは闇に包まれようとしている。
俺はお茶を飲みに立ち上がる。
口に含んだ麦茶はどこか色褪せて感じた。
「夕飯どうする?」
縁に問う。
しかし、返事はなく、優しい息しか聞こえてこない。
「縁?」
彼女の顔を覗く。そこにあったのは可愛いとわかっている寝顔。
どうやら、疲れて寝ているようだ。
俺はキッチンに立ち、何事もなかったように料理を作る。
何故だろう。
華やかに感じた時の後は、普通の日常なのに色が無くなりつつある世界になるのだろうか?
だが一つわかった事がある。
色褪せた世界でも好きな人と居れば、白黒では無くなり暖色に包まれるように感じた。
心の温かさに比例するのだろうか?
俺にはわからない。
そもそもこの世の中は残酷な世界。
人さえ人を殺す。人が作った社会も複雑極まりない形をして自身の首を握っている。
社会は人を殺す。
縁だってそうだ。
友達が居ないと言った。
どうせ、イジメにでもあったのだろう。
彼女は中学生。そこは所詮ガキの集まりだ。
彼女の足を病気だなんだと難癖を付けて寄って集ってイジメていたのだろう。
体のアザがそう告げていると思う。
見て見ぬふりをした。彼女も触れてはならないと言った。
そして。
まだ夏休みに入って一週間も経っていない。
それは何を意味するのか。
彼女の記憶に未だに色濃く残っている記憶。
それが彼女自身を苦しめているのだろうと。
俺には何ができる?
縁を愛すだけで良いのだろうか?
彼女は俺の事を好きだと言った。
そして俺も同じ気持ちを抱いている。
良いのだろうか?
このままの不安定な関係で居続ければいずれは別れる。
早めに一緒になるか、またはその対か。
そうしなければ、彼女、縁は糸が切れた時、闇に落ちる。
一緒に居たいのは事実。しかし、あまりにも荷が重いのも事実。
俺はどうしたら?
「ゆーくん?」
起きた縁が声を上げる。
「何? 縁?」
「ゆーくんと別れる夢をみちゃってさ。私悲しくて悲しくてこれが夢で本当によかったと思っている」
どうやら、選択肢は一つのようだ。
「大丈夫。ずっと一緒にいるから」
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