11話

「そ、そんな事ないし」

「じゃぁ、何が物足りないの? 言ってみて?」

 言えないを訊いてくる。

「え? む、胸」

「やっぱり」

 と俺の手を手に取って、自ら胸に擦り付ける縁。

「ちょっと。何やって」

「今は、これだけだけど、これから大きくなるから安心して待ってて」

 まぁ俺も、大きくしようと企んできるんだがな。

「あぁー。ドキドキしちゃう。ゆーくんに触られると余計に好きになっちゃう」

 顔を赤くする。

「ごめん」

 と手を離した。

「好きだけど、まだ、したくない」

「え?」

「まだ、心の準備がまだだからさ」

 と、恥ずかしながら言う。

「わかった、これから慣れていこうね」

 笑う縁。

 何言ってるんだ。なんと言うかその、仕事は仕事だし、相手を傷けたくない、と思ってそう言ったけど実際どうなのだろうか?

 それもそうだし、本当に心の準備が出来てない事も事実だ。

「ゆーくん入るね」

 と、足の上に乗ってきた。

 女の子独特の重さと柔い感触に、頭が変になりそうだが、今は我慢するしかない。

「ゆーくん。好きだよ」

 と片道切符の言葉を投げかけて来る縁。

 今は仕事。仕事。ふざけていられる場合じゃない。なんと言うか、ちゃんと仕事はしないといけない。

 そうだ。これは仕事だ。

 だが、体は正直だ。

 縁の体を抱きしめ、引き寄せている自分がいる。

「ごめん暑い。のぼせる」

「ごめん!」

 と、俺は浴室を後にする。

「ごめん。これ洗濯機に入れておいて!」

 と渡されたのは、上下のビキニ水着。

「は?」

 待て待て。

 やっぱり破廉恥娘だな。縁は。

 と、重たい水着をネットにいれ洗濯機にいれ、服を着て歯磨きを開始する。

 その時、お風呂から出てきた縁と目が合う。

「きゃぁー! 変態!」

「どっちがだよ!」

 と反射的に言う。

「どっちがって? 私の事?」

 どうやら自覚がないらしい。

「ごめん。忘れて」

「あ、はい。わかった」

 と心の抜けた事を言う。

 そして、下着を渡した後、縁はパジャマに着替えた。

「私も歯磨きするー!」

 と僕の横に膝立ちして、事を開始する。

 当然早めに始めた俺から終わっていく。

 洗面所から離れようとすると縁は袖を引っ張り俺を引き留めた。

「離れないで」

 そう言って泣きそうな瞳で言う。

「分かった」

 と、手を繋がせられ、その場所に留めさせられる。

 縁は椅子を駆使して、うがいを済ませる。

「ありがとう。寝よっか」

「だな」

 と縁を連れて二階に行き、彼女の自室に入る。

 二人で布団に入り二人で抱き合う。

 昨日と同じく、胸に顔を押し付け撫でられる。

 こんな事、数えるほどしかない祝福だ。

 なんと言うか、包み込まれている感と言うか、温かみと言うか、そんな温かい感触の塊だ。

 よく耳を澄ませれば、彼女の鼓動が聞こえてくる。

 彼女もまた生きている。

 そう思うと、なんだが嬉しくなる。

 彼女も好きでやっていることだ。

 それに身を委ねて何が悪い。これも一様、仕事だ。

 と言い聞かせ、自分を甘やかす。

 人の温もりとは、遊戯以上の幸せな時間を与えてくれる温かみ。

 つまり最強だ!!!

 人とは最強だ。

 何を言っているんだろう?

 まぁいい。人とイチャイチャすることは悪くない事。これは明白だ。

 それも、好きな人。気がある人ととは格別だ。

 それに匂いも頭を痺れされる材料。

 何も考えられなくなり頭が真っ白になる。

 好きだ。

 以上。

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