9話

「ゆーくん? どうしたの? まだ虚ろな顔して、何かあったの?」

 と縁。

「なんでもない。ほれ、焼けたぞ」

 焼き上がった、お好み焼きを縁に渡す。

「じゃぁ、風呂洗ってくるわ。食べ終わったら教えて」

 微笑み、風呂場に向かう。

 その時の縁は、なんと言うか寂しそうな顔だった。

 洗剤を付けたスポンジで浴槽を擦る。

 なんと言うか、やり慣れたことだ。子供の頃親に頼まれてやったっけ。

 そんな過去を思い出す。

 でも姉が来てからは、姉が代わりにやったっけ。

 と思いつつ、事を済ませた。

「この部屋、お好み焼き臭いな」

 消臭スプレーどこと縁に訊き、棚に置いてあったそれを手に取る。

 カーテンや、ソファーなど布製品を中心的に部屋全体に吹いていく。

「ゆーくん。どうするのこれから」

「え? これから? 洗い物してお風呂入るかな。なんで?」

「一緒にお風呂入りたい」

 んんんん?????

「ごめんそういうのは、バイト中はお断りしています。それに今の気力じゃ色々抑え込むのが無理そうだから。一緒に入りたいなら契約期間の終わったプライベートでお願いします」

 よっしゃ、今回は流されずに済んだぞ。

「じゃぁ一緒に寝るときに可愛がってあげる」

 ウインクして、怖いことを言う。

「今夜は癒してもらおうかな。なんちゃって」

 と、鉄板を洗いながら言う。

 二人の間に笑いが起こる。

「いっぱい癒しちゃうんだから。覚悟してね」

「あ、でもえっちいのは無理だから」

 無理な事は前もって言う。

「ゆーくんのえっち。誰がそんな事するって言ったの?」

 今ままでの態度とかから、しかねないと思ったんだが。と絶対本人の前では言えない。

 と思っているといつの間にか、鉄板と皿が全て終わっていた。

「風呂入ってくる。って縁入ったっけ? ド忘れした」

「後でいいよー、というか後がいい」

 なんか嫌な予感がする。

「わ、わかった入ってくる」

 と、風呂に向かった時。

「待って! 私も連れて行って。お話したい」

 縁が声を上げる。

「よし、じゃぁおいで」

 と、縁を抱き上げる。

 そして一緒に風呂に行った。

「ごめん、服脱ぐから後ろ向いてて」

「あ、うん」

 そんなやりとりの後、俺は浴室に入る。

「ゆーくんは、なんでこのバイトを選んでくれたの?」

 と質問。

「あの、俺に姉がいるのだけど、その姉にオススメされたからかな」

「そうなんだ、やっぱりお金欲しいの?」

 なんかとんでもない事を訊いてきた。

「まぁ人並みには欲しいかな」

「ふーん」

 帰ってきたのは生返事。

「なにが訊きたいんだよ」

「いやなんでも。それにしてもゆーくんいい匂い」

 今なんて?

「待て、今縁、俺の服嗅いでるな?」

「あ、バレちゃった」

 ったく、この娘は何をやらかす分からないな。

 その後、落ち着けず、風呂に浸かっていた。

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