8話

「さっきはごめんね」

「別に良いよ。勤務場所から離れた俺が悪いんだ」

 ソースを焦がし、香ばしい匂いを放つお好み焼き。

 俺はそんなお好み焼きを切り分け、縁の皿に乗せる。

 「んー!なにこれ美味しい! こんなに美味しいお好み焼きってあったんだ!」

 と美味しそうに咀嚼する縁。

「レシピ通りに作っただけだけどね」

「いや、ゆーくんが作ったっていう隠し味があるから美味しいの!」

 と飲み込んで話した。

 俺は笑顔で答える。

「そんなの不味くするだけだろ」

「ううん、そんな事ない。誰もが自分のために作ってもらったご飯は美味しいものだよ。特に恋人はね」

 目を輝かせて言う。

 恋人か。俺なんかで良いのかな。もっと料理も上手くて、良い顔の男なんていっぱい居るはずなのに。なぜ俺なのか。

 応募者の中で俺が一番良かったから? 多分そうか。

 待てよ。なぜ俺はこう、ネガティブな思考に至ったんだ? 別に自分を下げる必要なんてないじゃないか、逆だ。自信を持て!

「ゆーくん?」

 そんな声で現実に連れ戻される。

「新しいの焼いてくれない? って顔色悪いよ! 大丈夫?」

「うん? 大丈夫。新しいのな、わかった」

 近くにあるボールを手繰り寄せ、ホットプレートの上に乗せる。

 ジュージューと、音を立てて焼けていく様は俺の心のようだった。

 焼けば焼くほど焦げが出る。考えれば考えるほど焦げ、使えない思考が出てくる。

 深くため息を吐く。

 今日一日疲れたなーなんて自分に言い聞かせながら、お好み焼きを頬張る。

 縁に癒してもらおうかな。

 そう思った。

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