6話
いつもとは違う朝。
それは、横に女の子かつ美少女がいること。
少女は、可愛い寝息を立てて、ぐっすり眠っている。
待て俺。何この状況を飲み込んでいるだ。
俺は、年齢と彼女いない歴が等しい人間だ。女っけなんて微塵もなかった。
そんなある意味、女子や女性を近寄らせなかった俺が、なに女子の懐の中で寝てるのだ。おかしいだろ。
覚醒した意識が、今現状のおかしい箇所を袋叩きにする。
過度なストレスから、頭を掻き毟る。
「あ」
なんだか、ネトネトする。
そう言えば俺、昨日風呂入ったっけ?
俺、最低かよ。この非日常で女の子と寝る事したのに、風呂に入ってないのかよ。あー絶対嫌われた。しかも、懐の中、真上には鼻。
やっちまった。
「ゆーくん何やってるの?」
布団の上で、絶望した顔で呆然と膝立ちしていれば、そう言った感想も出てくる。
「そう言えば、縁。昨夜、俺臭くなかったか?」
「うん? 何も感じなかったけど。と言うかいつもよりよく眠れたよ。どうしてそんな事聞くの?」
まぁ実際は少しは匂ったけど私の好きな匂いでよく寝られたんだけど。
「縁、何か言ったか? いや、なんでもない」
セーフ!
なんと言うか、気づかれなくてよかった。
「いやぁ。ゆーくんそれは?」
と、顔を隠した縁。
説明しよう。
男の子というのは、朝元気になってしまうのだ。だが、それは本人の意思ではないので生ぬるい目で見ておいてあげよう。見つけても触れないように! かなり傷ついてしまうぞ!
「とう言う訳だ。縁、わかったか? ってなんでそんなに残念そうなの!?」
「私で興奮した訳ではないのね。残念」
と、憂鬱な顔を見せる。
彼女自身何言ってるのか分かってるのか?! 到底俺の頭には理解できな事が渦巻いているのは理解した。
「なんか、ごめん」
それは、朝七時頃の出来事だった。
時刻は八時。
俺は、シャワーを浴びた後、朝食を作っている。
「卵焼きに、砂糖いるか?」
「うーん。要らない。醤油だけで良いと思う」
「オッケーって、今更思った事なんだが、なんでそんなに早くから婿探しをいてるのか、俺にはさっぱりわからん」
思っていたことを言ってしまう。
「なんでって、母がそう言った。そうなっちゃった以上早く養ってくれるパートナー見つけろって。で見つけたのがゆーくん!」
ない足をポンポンと叩いて言った。
「ごめん変なこと聞いた」
養わないといけないのか。荷が重い。
そもそも、結婚するかすら、彼女になるかどうかすらわからないのに、何考えているんだ俺。
「今日ショッピングモールに行くんだよね?! じゃあ、おしゃれしなくちゃ」
と言って、匍匐前進で洗面所に向かって行く。
「おいちょっと待って、これ焼き上がったら、連れてくから」
と声をかける。
「やったー! ゆーくんの抱っこだ!」
と、ソファーに戻り、はしゃく縁。
「はい出来ました。っと、じゃぁ洗面所行くか」
「うん!」
洗面所に着いたのだが、縁は謎に隣接する扉を指さしてその中に入った。
そこは、でっかいクローゼットだった。
服がびっしりと並んで、なんというか凄かった。華やかな服から、渋く落ち着いた服までなんでもあった。
その中で、縁が指さした服を手に取るとそれはワンピースだった。青くヒラヒラの付いたそれを、彼女に渡す。
なんと言うか。ってここで着替えるのかよ。
「え。ちょっ。後ろ向いておくわ」
「だーめ手伝って。ほら、子供みたいにバンザーイとか。してさ」
もうそれ、手伝いじゃないくて着せてってことだよね?
「あ、はい。バンザーイって、パジャマ脱いで」
「うん? あ、今脱ぐね」
と本当に脱ぎ出した。
なんだか、こっちが恥ずかしい。まぁ良いや。
脱ぎ終わった体を見ると、足以外はとても綺麗な肌だった。足は完全に膝から先が無い。その周辺は、赤く火傷のような跡が残り痛々しい。
「そんなジロジロ見ないで。恥ずかしい。早く着せて」
「え? あっ。バンザーイ」
つい見惚れてしまった。健康的な少女の着替えなんて心臓が爆発するかと思っていたが、何やら感心に近い感覚だった。
そして、青色のワンピースを身につけた少女は、それはもう美しかった。
細くて綺麗な腕。セミロングの髪は動く度に動いて可愛らしい。顔は元子役なだけあって、整っており、精密に作られた人形みたいでそれはもう、可愛い。
「ゆーくん。どう? 似合う?」
「うん。似合うよ。とっても可愛い」
と、言うと腕の中に飛び込んできた。
「好きな人に可愛いって言われるとドキドキしちゃうね」
「そ、そうか。朝ごはん冷めるから食べよっか」
「うん」
そして、俺たちは移動して、朝食を食べた。
女の子と一緒に食べる、食事はとてもおいしかった。
そして、問題が発生するであろうショッピングモールに向けて移動する。
車椅子との駅内の移動は、かなりしんどかった。
色々、階段だらけで、車椅子と縁を一緒に運ぶのに苦労した。しかし、その度に縁が応援してくれたから、なんとかがんばれた。
そして、着ショッピングモール。
「わぁ! 久しぶりに来たー!」
と言って、某アルファベット三文字のショッピングモールに来た。
「意外と混んでるな」
「だってここ人気だもん。で、映画館はかなり上の方だから」
と誘導され、映画館に入る。
そして、二人の時間を過ごした。
映画の内容は、少女が災害から身を守る話。だが最後には主人公は暴れ出した狂人を、自身の身を投げ出して止めた話だった。
映画の視聴中。彼女が手を握ってきて、ドキッとしたがもう慣れたものだ。握り返してあげた。
それからもう、映画が終わるまで離さなかった。
映画が見終わり、昼食を食べようと三階に降りた。その時。
「おーいどうしたのお前って。その子だれ?」
と学校のクラスメイトが話しかけてきた。
「ゆーくんの彼女でーす」
と縁が言った。
「おいちょと待て。縁、変な事言うなよ」
「お? お前彼女出来たなら教えろよ。それなら、俺らはおじゃま虫なんでどっか行くわ。楽しめな」
と姿を消していった。
だが。
振動したスマホを取り出してその通知の内容を確認する。
「げっ!」
そこに書かれていたのは、チャットアプリのクラスグループ。俺に彼女が出来たと言った報告メッセージだった。
「あいつら」
「ゆーくんどうしたの?」
「いや、見てよこれ」
「あーなるほど、じゃぁ本当にお付き合いしちゃう?」
と悪戯っぽく笑った。
「うん」
体が勝手に返事をしていた。
ごめん。俺。一人だった時の俺ごめん。
縁は、目を丸くしていた。
気を紛らわせるために、俺は近くにあったフードコートのラーメン屋に向かった。そして注文した。ちゃんと二人分。
俺は、縁を席に着かせて、ラーメンを取りに行った。
「わぁ、美味しそう。ってさっきの何?」
「いただきます。って、あれの事? 俺の気持ちだよ」
縁は泣きながらラーメンを啜っていた。
それにしてもこのラーメン美味いな。
家に帰ると、縁は当たり前のようにソファーに寝転がった。
「嬉しいなー、ゆーくんが付き合ってくれるって。ねぇゆーくん今夜も一緒に寝よーよ!」
「はいはい、わかりました」
と、帰りに寄ったスーパーで買ったものを冷蔵庫にしまう。
今夜も? だと。
内心焦りながら。
「それ終わったら、こっちにきてね」
とソファーをトントンしている。
そこに向かうと、横には縁が座っていた。
なんか嫌な予感しかしない。
腰をかける。すると、縁は俺の足の上に乗ってきて、嬉しそうに笑った。
「クーラー涼しいね。ゆーくんは温かいけど」
と、頬を触ってきた。
体を密着させ、甘えてくる。
「彼氏だから何しても良いよね」
気付けば顔がキスをする距離まで近づいてきた。が、俺はそれを離した。
「なんでよ。せっかくキスをしてあげようと思ったのに」
「待て、俺が死ぬ。心の準備が出来てない。また今度な、それに女からなんて男の恥だからさ」
適当な事を言って誤魔化す。
「たしかに私も、ゆーくんから来てほしい」
なんか丸く収まったようだ。
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