3話
いや、まだ完全に好きになった訳ではない。
まだ勝機はある。
「というか、俺は何と戦ってるんだ。あほかよ」
今、俺の中には二つの感情がある。
いっその事、本当に好きになって、カップルになるか。
それか、仕事と割り切って、彼女の誘惑に耐えるか。
どちらも荷が重たい。
だって、好きになるとしても彼女は、元子役のめちゃめちゃ可愛い子だぞ? 周りから、「釣り合ってないから分かれろ」だとか、そんな事言われたら返す言葉が見当たらない。
かといって、あの誘惑に耐えらるかと言ったらそうでもない。
「本当にどうしたら?」
いっそのこと本人に聞いてみるか。
「あのさ縁。俺も貴方のことが好きかもしれないんだよ。初めて会った時からというか、このバイトを見つけた時、顔写真見てやりたいと思ったんだ。正直に言うと好みなんだ。でも、もし本当に付き合ったら、その何というか、負けた気分になるんだよ。過去の自分を裏切ったみたいで。それに付き合ったら付き合ったで、不釣り合いだのと言われるのが怖いんだ。俺はどうしたら」
「ふーん、そう思ってるんだ。私は、何でもいいけどなー。ゆーくんの事、大好きだから。今日分かったけど、性格も私好みだし、本当にお婿さんになってほしいと思ってる。じゃぁさ。この一か月で、付き合うか、付き合わないかを決める時間にしようよ。もちろん私は誘惑するけど」
「気が乗らないけど、そうするしかないのか」
まぁいいけど。
「でさ、ごめんだけど、湯船に入れてくれない? 入りにくくてさ」
それって、この女の子の入ってる浴室に入れと?!
待て待て、落ち着くんだ。
いくらそうだとしても、何というか、これは仕事だ。仕方ない。そうだ仕方ない。
「入ってもいいのか?」
「入らなきゃどう動かせっていうの?」
「だよな。じゃぁ失礼します」
扉を開ける。しかし、そこには頼まれた事が既に完了していた。
俺の目に前に丸みの帯びた体が目に入る。
「失礼しました!」
と勢いよく浴室を後にする。
「かわいいなーゆーくん」
勢いよく飛び出した俺は、なんとなくリビングのソファーに身を委ねた。そして息を吐く。
「あれって、ありかよ。なんだよ。ある意味セクハラじゃないか」
脳裏に焼き付いた、あの姿が浮かぶ。
「何考えているのだ俺!」
でも、あの足のケガ本当にどうしたのだろうか。
あの火傷のような跡、足を切断しなくちゃいけないほどの火傷?
俺は、彼女になるであろう少女の体よりも怪我のほうが気になって仕方なかった。
「あのー出たいんですけど!」
そんな声で我に返る。
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