1話
時は遡る。採用試験最終面接。
「では、佐分利さん。彼女はいますか?」
ここに居るのは志望者は自分含めて二人。
なんか、資格とか持っている人との一騎打ちの面接。
勝ち目がない!
そう思えた。
「お付き合いしている人ですか? 今のところはいません」
「わかりました。では、佐分利さん。私、縁を愛すことは出来ますか?」
「それは出来ません! いくらなんでも雇い主を愛す、いえ、そのような目では見ることは出来ません」
「なるほど、がっかりです。では、今回はご縁が無かった事で」
「!?」
なんか、ものすごい質問されているのですけど?! それでなんか、落ちた宣言食らっているんですけど!
「では大坪さん。貴方には彼女等の人物がいますか?」
「はい。いません」
と言うか、人生で一回も彼女が出来たことがない。
そんな事は言えるはずもなく、次の質問。
「私を愛すことができますか?」
「はい!」
と答えた。
「どのような体でも?」
「はい!」
うん? 今なんて言った? 勢いで返事をしてしまった。
すると、面接官及び雇い主であるとても可愛らしい少女、白谷 縁さんは言った。
「貴方は気が合いそうです。では、これからよろしくお願いしあます。大坪 優さん!」
「はい!よろしくお願いします」
なんか、合格した。
「では、こちらこそ今日からよろしくお願いします」
季節は夏。
俺は、泊まり込みのバイトに受かった。
「ゆーくん。って呼んでいいですか?」
彼女の自宅に向かい車椅子を押す。
「え? 僕は構わないですよ」
そういうと、彼女は目を丸くした。
「やったー! 後、敬語やめて。堅苦しいの嫌いなの」
「あ、わかりまし、いや。わかった」
そして、そんな話を続けていたら、もう彼女の自宅に着いてしまった。
なんと言うか、普通の家だった。
これは勝手な思い込みだが、専属の介護士を雇う事のできる中学生って事は、相当なお金持ちに生まれたのかと思っていた。
「あっ。ゆーくん。これ家の合鍵。あげる」
「合鍵って、貰っていいのですか?」
唐突に大事な物を渡された。
「だって。私の事愛してくれるって言ったじゃん。ならもう契約期間切れても会いにきてくれるかなーって思って。悪い? 親も二人とも海外出張で、今年の冬に一回しか帰ってこないし。寂しいし」
「わかった。って、それは、縁さんと付き合えと?」
「そう言うこと!」
彼女はご機嫌だ。
待て、初めての彼女が可愛すぎる件なんだが? なんというか、年相応の胸でしかも体ちっちゃいし、髪も俺好みのセミロングだしこんな事があっていいのだろうか?
あまりにも尊いため、血反吐を吐きそうになる。「ところで、何故、俺を採用したのです?」
「え?料理が趣味って言うし、カッコいいから」
ありがとうございます。こんな天使のような存在からカッコいいという言葉がもらえました。
「あ、そうなの。立ち話もあれなんで家入りましょう」
あまりの、嬉しさに片言になる。
「だね! ゆーくん抱っこ」
ん?
「抱っこ?」
「そう。車椅子を靴箱の横に置いてるからそこに置いて、私を部屋まで連れて行って」
いきなりハードなものがきた。
彼女の脇に手を入れて、持ち上げる。
そして、胴体を近づけて、赤ちゃんのように抱っこする。
車椅子を玄関入ってからすぐのところに置き、指示された通路を歩いて部屋に向かった。
二階に上がり部屋に入ると、そこはまさに女の子の部屋だった。
ピンク色を基調とした、華やかな部屋。とても可愛らしい。
ベットに彼女を置いて、俺は部屋を後にしようとする。
「待って! ここに、私の近くに居て」
と、ベットの足元をポンポンと叩いて指示をする。
「わ、わかった」
俺は、指定された場所に座った。
なんと言うか、恥ずかしい。
脈が上がってるのがわかる。
「ゆーくん、緊張してるの? もしかして、女の子の部屋初めて?」
そう、悪戯っぽく笑う縁。
「はい」
「あはは、その様子だと、プロの童貞だね。と言っても、私もやったことないんだけど」
なんか、ムカつく。そしてブーメラン。
なんと言うか、してもないくせににバカにされた。
「ところでさ、飲み物とってくれない? そこの冷蔵庫に入ってるから」
と、白い箱を指さす。
一リットルペットボトルぐらいの大きさの見てわかる白い箱で、銀色の取手がついている。
それを開けると、一丁前に冷気が漏れ出してくる。中身は、缶ジュースが二本しか入っておらず、片方を手に取り、扉を閉める。
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