第15話 カンタンな結末③
気がつくと、ベッドの上だった。
いつもの兵舎ではない。おそらく、医療舎の方だろう。体中が裂傷と擦り傷だらけで、じくじくと痛んだ。巻かれた包帯から、まだ、血が滲んでいる。そして、左腕を動かすと、焼けるような痛みが走った。肘から下がなくなっていた。
「気がついたか?」
ザックが心配そうに顔を覗き込んだ。側にはリン隊長もいた。
「……夢を見ていた」
「夢?」
二人は顔を見合わせた。
「無理しなくていい、話は後で聞く。今はゆっくり休むといい。」
隊長とザックが去った後、ノヴォルは、ぼんやりと天井を見つめた。
疲れ果てていた。来る日も来る日も、湧いて出る得体の知れないバケモノ、あいつらとの終わることのない戦い、それが現実だ。
他の奴も多分そうなのだ。戦闘中、いきなり立ち止まり、無抵抗に食われていった仲間を思い出した。
もう、嫌だ。どこか遠いところに行きたい。何も考えず退屈で平和な毎日を送れたら、と、どれだけ考えたことだろう。それが自分の夢だったのだ。
喉の奥から乾いた笑い声がもれた。ひとしきり笑うと、やがて、むせび泣きに変わった。
これは夢だ。
ノヴォルは、目を閉じた。
もうすぐだ。きっと、もうすぐ、母親が起こしに来る。そうしたら、学校に行く、部活は面倒だから、サボってしまおう、ゲームをして、家でごろごろして過ごすのだ。そこには、バケモノなどいないし、戦う必要もない。ただ、暇を持て余して、ぐだぐだ文句を言うだけ。何て素晴らしい毎日だろう。
そう、ただ目を覚ますだけでいい。それは、とてもカンタンなことだ。
(了)
何てカンタンな たおり @taolizi9
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