第8話 カンタンな戦い②

 目が覚めた。気分は爽快だ。

 ノボルは夢の内容をはっきりと覚えていた。化け物どもを倒した時の感触が、まだ手の中に残っている。すごいな、本当にリアルだ。最強の戦士となって、地を駆け抜ける自分の姿を思い出し、一人で悦に入った。


「ノボル、ノボル、起きてるの? あら」

 部屋に入って来た母親は、息子がすでに起きて着替も終わっているのを見て、面食らっているようだった。

「どうしちゃったのよ、熱でもあるんじゃないの?」

 なんでもないよ、と答えると、階段を降り台所で朝食を取る。ご飯に目刺しに沢庵。いつもなら「ダサい」と文句をたれるところだが、今朝は許せる気がした。味噌汁に口をつけると、まだ冷めてなかった。早めに起きるのも悪くない、とノボルは思った。


 いつもより、余裕で家を出て、余裕で学校に着いた。

 自分の席に座ると、隣の女子が声をかけて来た。

「あら、珍しい。いつもギリギリなのに、どうしちゃったの?」

 ノボルは無視した。

「まあ、どうでもいいけど、居眠りはやめてよね。あんたなんかどうでもいいけど、こっちまで目をつけられて、超迷惑なんだから」

 うるさいな、相変わらず嫌味な女だ。早く席替えになればいいのに。向こうもそう思っているだろう。


 その日は、一日中上機嫌だった。時折、ニヤニヤして教師や周りから、気味悪がられたくらいだ。例の女子は不快そうにノボルを睨みつけたが、ノボルは気にしなかった。


 授業が終わると同時に、ノボルはとっと家に帰った。夕飯を食べ、宿題を済ませ、風呂を済ませると、ワクワクしながら、布団の中に入った。

 やっぱり、生活にはメリハリと刺激が大事だよな。

 さて、今夜の夢はどうだろう?


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る