第7話 カンタンな戦い①

 ザックが先陣を切って駆けていく。槍を抱えて、よくあんなに速く走れるものだ。だが、ノボルも負けてはいない。間もなくザックに追いついた。後ろに、他の衛士たちが続く。

 正面から巨大蟻がニ匹やってきた。ザックが言った。

「俺は右の奴を片付ける。おまえは左を頼む」

「わかった」

 とは、返事をしたものの、どうしたものか。ノボルはじっくり相手を観察した。幸い、こいつらは、それ程速くは動けないようだ。

 距離を取り、用心しながら、一瞬体持ち上げた隙をついて、下から首……というか、頭と胴体の継ぎ目に斬りつけた。確かな手応えがあった。蟻の体から体液が飛んで、ノボルの手甲を溶かした。これって何かペナルティーがあるのだろうか?それとも、夢だから関係ないのかな?まあ、いいか次から気をつけよう。


 ノボルは、要領よく、サクサクとバケモノたちを倒していった。何だ、結構カンタンじゃないか。体が自分のものとは、思えないくらい、すいすいとよく動く。とてもいい気分だった。


 それでも、蟻たちの数はあまりにも多く、全部を掃討する頃には、へとへとになっていた。一体、自分は何十匹倒したのだろう。 

 解散後、ふらふらとした足取りで兵舎向かう途中、一人の男と、すれ違った。

「いかがでしたか?」

 聞き覚えのある声だった。カンと名乗った男のものだ。

「お楽しみいただけましたか?それは何より。ただ何事も、ほどほどにですよ」

 あわてて振り返ったが、男の姿はどこにもなかった。

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