第6話 カンタンな設定③

 兵舎の外には、もう皆が集まって整列していた。

「遅いぞ」

 リン隊長がにらみつける。

「何をしていた」

「寝てました」

 周囲から、笑いがもれる。

「ふざけるな」

 隊長は顔をしかめた。

「時間がない、すぐに配置につけ。ザックとノヴォルの隊は中央。他は両翼を固めろ、行け」

 城門が開かれ各隊は所定の場所に待機した。

 攻めてくるのは、どんな奴らだろう。小鬼?トロール?それとも、角の生えた悪魔の軍団か?


 地平線の向こうから、夥しい数の黒い塊が現れ、こちらに向けて川のように押し寄せて来た。近づくにつれ、ガチガチと音が響いて来る。

 あれは、何なんだ?ノボルは絶句した。

「何やってる?まだ出るな」

 飛び出そうとするのを、ザックが制する。

「弓士隊が先だ」

 射程距離内に入ったと見るや、城壁の上から、一斉に火箭かせんが放たれた。続いて、第二射、三射……群れの頭上に雨霰あめあられと降らせる。群れは炎に包まれ、ギギギギと金属的な音が上がった。断末魔の悲鳴だろうか?


「油断するな、来るぞ」

 ザックが叫んだ。炎の中から黒いものが、飛び出した。蟻だった。いや、蟻にしては大きい、人の倍くらいの大きさだ。顔の中央に大きな赤く光る目が一つあり、ガチガチと顎を震わせながら向かって来る。怒っているようだ。群れの大半は焼き払われたものの、ぞろぞろと、かなりの数が這い出して来た。

「行くぞ」

 ザックが飛び出した。ノヴォルも後に続いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る