第5話 カンタンな設定②
「ノヴォル、おいノヴォル、起きろ」
目を開けると、誰かの顔が目に入った。見覚えのある奴だ。こいつの名は確か……ザック、そうザック、同じ隊の仲間だ。あれ、何で知ってるんだ。
「とっとと支度しろ、奴らが来る」
ザックは先に行くと言って、兵舎を出て行った。
ノボルの頭にサラサラと、設定知識が流れ込んで来た。ノヴォルというのは、この世界での自分の名だ。自分は城を守る衛士の一員なのだ。
この世界で今から百年ほど前のことだった。どこからか魔物の群れが襲来し、人々を襲った。時の女王は生き残った民を城内に退避させると、魔力で皆を眠らせ、城の周りに茨の結界を張り、自身も眠りについた。
城下には、衛士隊とその家族たち、魔力を持つ女王の妹が残り、魔物たちと戦うことになった。
十年かけて、衛士隊は、魔物どもを一匹残らず殲滅した。さあ、城の結界を解き、皆を解放しようという段になって、あろうことか別の魔物どもが現れた。
以来、駆逐しては別の化け物が現れ、それを退治すると、また次が……という状態が延々と繰り返されているのだ。
ノボルは革製のアーマーを身につけると、出口に立てかけてあった戦槌を手に取った。手に馴染んでいることから、これが自分の武器らしい。かなりの重さがある筈のそれを、軽々と持ち上げることができた。こいつは凄いや。かなり、戦闘力が高そうだ。
でも、自分がどれくらい強いのか、さっぱりわからない、やはり、職業とスキルと能力値くらい、シートに載せておくべきだろう。今度、あのカンという男に会ったら言っておこう。
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