第4話 カンタンな設定①
意外なことに、枕を目にした母親の一声は「よかった」
だった。
ノボルが不思議に思っていると、母は理由を告げた。
「実は、あんたの枕が、どこか行っちゃったのよ」
今朝、とても天気がよかったので、母親はノボルの布団と枕を一緒に干しておいた。昼過ぎに取り込もうとして、気づいたら、なぜか枕だけが、なくなっていたそうだ。
近くを探したが見つからず、ベランダの下に落ちたか、と覗いてみたが、そこにもなかったらしい。
「猫かカラスが持ってっちゃったのかしらね?ほんと、どこに行ったんだか?」
まさか。カラスが枕をくわえて飛んで行くなんて、想像がつかなかった。猫だってそう遠くまで引きずっては行かないだろう。
「とにかく、ちょうどいいから、それ使っててちょうだい」
部屋に入ると、隅っこの方に枕を放り投げた。偶然にしては、あまりに都合が良すぎる。気味が悪い。こんなもの使ってやるものか。寝る時間になって、ないのも気持ち悪いので、バスタオルをたたんで枕の代わりにした。
……なかなか眠れない。頭のところが、平ら過ぎて寝心地が良くない。うつ伏せになってみたが、湿ったタオル地が顔に当たって気持ち悪い。ダメだ。
何度も寝返りを打った末、ノボルは、しぶしぶ起き上がって、枕を拾いに行った。袋から出してみる。カバーの端に丸に囲まれたバッタのような虫の模様とKANTAN.LABのロゴがあった。堂々とバッタモノとは、いい度胸だ。
ノボルは、叩いたり、引っ張ったり、顔を近づけて匂いを嗅いだりしてみた。別に変わったところはない、ただの白い枕だった。ホームセンターで売ってる安眠枕と同じだ。
仕方ない、使ってみるか。袋を捨てようとして、中にまだ何か入っているのに気づいた。緑の袋だった。あいつ、確か、夢シートとか言ってたっけ。
開けると、ペラペラの紙が一枚出てきた。ゲームカードをちょっと大きくしたような感じで、槍か何かを手にした戦士の絵があった。印刷もデザインも適当で解説もない。全く、子ども
まあ、ものは試しだ。ノボルは枕カバーのポケットにシートを入れると、横になった。枕の窪みが、頭と首にしっくりきて、思ったより、いい感じだ。そのまま、すぐに眠りについた。
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