あの日、君は彼岸花を残して消えた

このやろー

あの日、君は彼岸花を残して消えた

目が覚める


いつものように




でも今日は


いつもとは違った




新聞を取りに


ポストを開ける



中には一輪の彼岸花と


見慣れた文字が一行書かれた


小さな手紙が入っていた







“ごめん”









この字は紛れもない君の字だった





私は怖くなった


これは何の謝罪だろう




大切なものを失くしたような痛みが


私に強く傷をつける





金縛りにあったかのように


私はそこから動けない







いつの間に眠ってしまっていた


夕方の五時



いつも君が


私のもとへ来る時間




ドアの開く音も


ただいまの声も


聞こえない






ふいに救急車のサイレンが


耳に入る




そして次に


自分の動悸が


うるさいほどに


聞こえる







ああ


もう遅いのかもしれない








ふとテレビをつけてみる



君の名が映っていた




自殺だなんて












もう少し早く


分かっていたら



あのメッセージの意味に


気付いていたら






大切なものは


消えてしまうのね







私にはもう


この彼岸花を


飾ることしかできない













そして翌日


彼岸花は


私を残して枯れた

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あの日、君は彼岸花を残して消えた このやろー @wolf589

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