第1章-1部 異世界転生

穏やかな日差し、そして心地よい空気、また近くから聞こえてくるせせらぎの音、また木々や花などの植物の匂いがする。

 ん?

俺は違和感を感じた。

 俺死んだよな?

そう思い、目蓋を持ち上げてみると……。

「えっ⁉︎…ここは……どこだ?」

そこには俺がトラックに轢かれた時にいた場所ではなく、明らかに違った。

 俺は確か上司の今島の奴に轢かれたような…。

 だけど見るからに天国ってわけじゃないし。

 もしかして、ここって異世界だったりするのかな?

そんな思考を巡らせながら立ち上がり、周囲を見渡してみると、近くで音がした。

「誰だっ!」

音がする方に振り向いてみると…

「スライム?」

だが、そこにいたのは前世でよく漫画やアニメで見た可愛らしい姿ではなく、顔?みたいなものがあるがそれ以前に体は原型がなく、デカすぎる。

「でっ...デケぇ….」

ふと、その時思考を遮ったのは「こんな奴に襲われたらどうなるのか」と、

 そういえば、こういう異世界に転生、あるいは転移した時にステータスやらスキルを授かるんだっけ?

 だとすれば、どうするんだ?まぁ、ひとまずステータスと叫んじゃえば確認出来るんかな?

そう思い、言ってみた。

「ステータス」

そう言ってみたものの、いっこうにそれらしきものが現れない。

 じゃあ、オープンをつけてみるとどうかな?

「ステータスオープン」

……すると、目の前の空間にいきなり光板、あるいはウィンドウと呼ぶべきものが現れた。

「よっしゃ!出たぞ!」

そう言いながら、覗いてみると……

「はっ?」

俺は驚いた。そこには自分のファンタジー知識よりかけ離れた理解不能な数や種類のステータスやらスキルが並んでいた。

だが、俺は気付いた。肝心な体力値とレベルが他と比べて桁数が少なすぎるし、レベルに限っては1であった。

「こんなの無理じゃねーか!」

そう叫んだ時だった。

『そろそろ話をしてもいいかね?』

 えっ?

そんな声が、スライムがいた方向から聞こえてきた。

俺はすぐに振り向いた。するとそこには、先程よりも大きくなった偉そうなスライムがいた。

俺は呆然とした。

なぜなら、目の前にデカすぎるスライムがいるからである。

「…どっ…どどど…どちら様で?」

俺はあまりにもデカすぎたので、つい怯えてしまった。

『見れば分かるじゃろう?何処からどう見てもただのスライムであろう?』

 いやっ、ぜっっっってぇただのスライムじゃねぇーだろ!

俺は心ので中でそう叫んだ。

『おっと、すまんな。自己紹介が遅れたな。』

……ゴクッ………

俺は次の言葉を待つように息を呑んだ。

『我が名は元々無かったがこう呼ばれておる。ゴッドスライムと。』

 スライムの神?

俺は思わずそう思った。

『なぜ、こう呼ばれておるかというと、我はこの世界に存在しうるスライム達の始祖であるからである』

『まぁ、いわばスライムを創生した者だと思え』

 急すぎて、理解が追いつかないわ!

俺はそう心の中で叫んだ。

『して、お主の名は何ぞ?』

 これを断ったら何か襲われそうだし言っとくか。

そう思い名前を言ってみた。

「俺の名前は照井晶だ。こことは別の世界で死んだしがない“おっさん”だよ。」

俺はちゃんと自己紹介したが、何故かスライムは不満そうな顔(雰囲気)をしていた。

 俺、なんか気を損ねるような言い方したか?

『お主、その顔とその体でよく「おっさん」なんて言えたのう?』

 は…?

そこでようやく俺は体の異変に気付いた。

最初に手を見たがそこにはシワはなく、代わりにすべすべで少しぷにぷにしている。

恐る恐る他を見たが、いかにも死ぬ直前までの老いてきていた体とは全くの別物であった。

だが、ある重要な事を確認することが出来ないことに気付いてしまった。

 顔が見れない...もし顔が前世(?)のものよりスペックがとても低かったりしたら嫌だな。

鏡か何か無いと確認できないしな。    

「ゴッドスライムさん、鏡ってあります?」

俺はこの死後の世界なのかもわからない世界に、あるかも分からない鏡の有無について聞いてみた。

『すまぬがそのカガミとやらは何ぞ?』

 あれっ?もしかして無かったりする?

だとしたら、俺泣くよ?

鏡について説明したら分かったりするかな?

「えっと...鏡というものはそこにあるものを 光の反射によって写し出すものの事です。」

 これで分かってくれたかな?

そう思いながらゴッドスライムさんの方を見たらとても考えているように見える。

『すまぬが、お主の言う鏡というものはわしが知るこの世界の知識内にも、はたまたわしの全知識内にはない。』

俺はそれを聞いた瞬間立ちくらみがした気がした。

『もしかして自分の顔が見たいのかね?』

俺が半ば放心状態に陥っていた時、こんな事を聞かれたので嬉しすぎて「はい」と答えた。

『そういう事なら川などの水面で確認すれば  良いのだが、わしは早く本題に戻りいから特別にわしの体を使って見るのはどうゃ?』

俺はゴッドスライムさんの自然を使った提案に驚いたが、もっと驚いたのはゴッドスライムさんの体を使うというとても不思議な提案に何気なく「じゃあそれで」と、答えてしまった。

だが、いざ見ようとするとゴッドスライムさんの体の色は緑っぽい青で、とてもじゃないがはっきりと顔を見ることが出来ない。

「あの〜、ゴッドスライムさん?大変言いにくいのですがこの色だと顔が見れないんですが?」

俺は恐れ多くも言ってみた。

『おぉ、すまぬ。では色を透明にしつつ周りの景色を反射出来るようにするわい。』

以外にも怒ったりせず、俺が予想していたものよりとてもかけ離れた対応をしてくれたので安心しつつ心の中で、

色変えれるのかよ!

と叫んだ。

そして、色が変わったゴッドスライムさんの体に顔を近づけてみると、そこには俺が高校を 卒業した後にダイエットして手に入れた若し頃の、少しモテた顔があった。

それに驚愕しつつ自分の全体像を見たらまさに人生の最盛期と言っても過言ではない体があるのだ。

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