第6話

 次の日の放課後。僕は家庭科室で北原さんを待っていた。告白が失敗すれば、絶対にここにくると思ったからだ。


 しかし暗くなっても彼女は現れなかった。すると廊下を部活終わりの達也たちが通った。何故か勝悟もいて、彼を冷やかしている。




「おい、達也」


「おお、安田か。ちょうどよかった。勝悟のやつ、北原さんに告白されたらしいぜ」


「え、まじかよ」




 知っていたけど、知らないふりをしてやろう。




「それで返答は?」


「それがさ、こいつOKしたんだってよ。あれだけ華奢な女の子が好きって言っていたのに、そりゃないよな」




 勝悟は恥ずかしそうに言った。




「だって弁当がめちゃくちゃ美味かったんだ。なんていうか、食欲には勝てないよな」




 勝悟のセリフを聞いて、僕は目の前が真っ暗になった。そんなのありかよ。知らないうちに勝悟と北原さんのカップル成立に一役買っていたなんて。


 男子たちはいっせいに笑った。僕が呆然とするなか、勝悟が言った。




「でも北原さんさ、すごく厳しいんだよな。自分は結構太めなのに、太ってる男は無理だって」


「うわ、うぜー。のろけか!」




 達也が勝悟につっこむ。僕は乾いた笑い声を出しながら、勝悟に言った。




「あはは……。ねえ、勝悟くん。スイートポテトいっぱい焼いたんだけど、食べていかない?」


「えっ、いいの?! やったぜ!」




 僕は嬉しそうにする勝悟を見て、こっそりと口角を上げた。まだ戦いは終わっていない!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

デブレター 藤 夏燦 @FujiKazan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ