第2話

 そんなとき、思わぬことが起こった。修学旅行の部屋決めで勝悟と同じ部屋になったのだ。最悪だ。僕は枕投げに夢中になる勝悟たち男子を、遠目で見つめていた。明るくて、話し上手で、おまけに僕にも優しい。正直、完敗だと思った。勝悟になら、北原さんを渡してもいい。


 修学旅行も夜になり、恒例の「恋バナ」がはじまった。僕も混じって、話は盛り上がる。好きな女子の仕草やタイプの話で思春期の男子は沸き立つ。




「なあ、勝悟。お前、彼女とかいるの?」




 達也が話を切り出した。




「ううん。いないよ」


「お前ならすぐできそうだけどな。そう言えば最近、北原さんと仲良いけど、北原さんとかどう?」


「どうって、なんとも思ってないかな」




 勝悟はばっさりと達也の話を否定した。




「えーっ! 北原さん可愛いのに……」


「俺、華奢な女の子が好きだからさ」




 聞き捨てならない言葉だ。たしかに北原さんはちょっとむちっとしているけど。太ってなんかいないし、それがいいんじゃないか。勝悟は僕の心の怒りにかまうことなく、続けた。




「どんなに可愛くても、太っているなら無理だわ」




 まじか。むしろ僕はそれでもいいんだが。




(……! これだ!)




 その時、あるアイデアが僕の頭に浮かんだ。勝悟は太った女の子だけは嫌いだという。それに僕はちょっと前に北原さんが友達に、




「私、ついつい食べ過ぎちゃうんだよねー」




と漏らしていたことを思い出した。


 これしかない。僕は完璧な計画に思わず笑みを浮かべた。




(北原さんを太らせれば、彼女の好きな勝悟は北原さんのことが嫌いになる……)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る