#14

「紗英も行くぅ?うちらお茶して帰るんだけどー」


 放課後、永山ながやまさんと百瀬ももせさんが、池内さんを誘っていた。


 類は友を呼ぶ。

 永山ながやまさんも百瀬ももせさんも黒髪ロングで、二人の違いと言えば、前髪があるかないかである。さらさらのストレートヘアは、毎朝アイロンで入念につくっているのだろうと想像する。

 肌寒い季節をものともせず、丈の短いスカートをひらひらさせた、アイドルみたいな3人が教室の入り口にたむろしていた。


「今日はダメなんだよぉ。

 亮ちゃんと約束してるんだよね」


「えー!紗英、オトコ優先かよ!!!」

「てか、亮ちゃんも一緒に来ればいいんじゃん!」


「んー……。

 今日はホント無理なんだよね。

 亮ちゃんの友だちに彼女できたっていうから、一緒に遊びに行こうってことになってて」


「へー。亮ちゃんの友だちって、やっぱバスケ部の?いつも一緒にいる背の高いイケメン?

 ……なんて名前だっけ?」


「瀬良。瀬良翔平」


 久しぶりに瀬良くんの名前を聞いて、ドキリとした。しかも、池内さんの口から。


 彼女……できたんだ。


 思わず、ボクは、池内さんの方に目を遣ってしまった。


 ――瀬良翔平。


 そう口にした直後、池内さんがボクの方を見た。

 勢い目が合う。


「……?

 紗英、どうしたの?」


 池内さんがいきなりボクの方へに振りたから、永山さんと百瀬さんがぽかんとした。


「……ん?」


 池内さんが再び、永山さんと百瀬さんのほうに向き直る。


「染森さんがどうかしたの?」


「ううん!別に……。

 だからさぁ、今日は行けないんだよね!ごめんね」

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