#09
やっぱりデートなんだから、ワンピースだとか、せめてスカートを履いてくるべきだったと、ボクは後悔した。
女の子らしい恰好をすべきかなとは思ったんだ。
でも、ボクは別に瀬良くんに好かれたいわけじゃない。別に好きでもない瀬良くんに合わせて服選びする必要はないんじゃないかと思ったし、そもそも、スカートは好きじゃない。女なのに、女装するみたいだから。
だから、敢えてのスキニーデニムに白Tの吉田栄作ルックで来たんだけど、待ち合わせのカフェに入ってきた瀬良くんもデニムに白T。まさかの服かぶり。期せずしてペアルックになってしまった上に、
瀬良くんのほうもボクを見つけた瞬間、苦笑いした。
「服、かぶったね」
ボクの前に座りながら瀬良くんが言う。
「うん」
ボクも苦笑いをするしかなかった。
ボクたちはランチを食べ、13時24分から始まる映画に向かった。映画はマーベルのヒーローものだった。ボクがウルバリンが好きだと言ったら、瀬良くんが「これも絶対好きだと思う」と提案してくれたのだ。
映画の後は感想を話しながら、映画館が併設されているファッションビルのなかを見て回った。
「あれとか案外似合うんじゃない?」
瀬良くんが青いギンガムチェックのワンピースを指さしながら言った。
「そうかな?私、スカートほぼ履かないからなぁ……」
ボクはその服を手に取った。
「てゆーか、こういうの好きなの?池内さんとか似合いそうだよね」
「いや、そうかな?」
瀬良くんが左側の眉をあげて微妙な表情をつくった後、ボクの目を見つめて言った。
「普通に、そらに似合うと思う」
――今、シレッと「そら」って呼んだ……
ボクは頬が赤くなるのを感じながら、瀬良くんから目を逸らせた。
「で、でもさ……」
ボクは恥ずかしくて挙動不審になりそうなのを気取られないように、言葉をつないだ。
「池内さん、かわいいじゃん?これ、かわいい子が着る服だよ?」
「だから、そら、かわいいじゃん」
――ドツボ……
言葉を失うボクに、瀬良くんが畳みかけた。
「まあ、別に今のそらも好きなんだけどね」
――今、なんつった!?
ボクは思わず瀬良くんの顔を見た。
瀬良くんは小首をかしげ、ボクを試すように顔を覗き込んでいた。
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