#06
はじめはカラオケに行こうという案も出たけれど、瀬良くんが
「カラオケかぁ……歌う歌知らないんだよなぁ」
と渋ったのだ。
「えー!楽しいし、寛げるじゃん!瀬良くんの歌うの聴きたいよぉ」
池内さんが駄々を
「いいじゃん、歌えなくても。私も歌えないから聴いてようよ」
と言うと、横川くんが
「ええ!?二人しか歌わないんじゃもったいなくね?」
と言って、みんなで楽しめるボウリングを提案してくれた。
ボウリングはもちろん男女のペア対抗だ。
きっと池内さんは瀬良くんと同じチームになりたいだろう。そこは空気を読む。
「横川くん、私と一緒に……――」
とボクが誘いかけると、瀬良くんは池内さんのほうを見ることなく
「染森さん、オレと組もう」
とさらりと言った。
笑顔が消えた池内さんが真顔になった。
池内さんの顔色を
「……チ、チームはグットッパで決めよ?」
と提案した。
「でもさぁ、横川――」
「うん!そうだね」
横川くんの名前を不服そうに呼ぶ瀬良くんに被せて、ボクは賛同した。
「池内さんも、グットッパでいいよね?」
「……うん。いいよ」
池内さんは静かに答えた。
グットッパの結果、瀬良くんと池内さん、横川くんとボクがチームになった。
チーム分け以降、池内さんの口数はすっかり減ってしまった。瀬良くんの彼女に全く興味がない態度はそのまま変わらなかった。
ゲームの間中、瀬良くんと池内さんは一言も口を利かなかったから、横川くんとボクが必死になって声を出し、その場を盛り上げるように努めた。
ちなみに、瀬良くんと池内さんは一言も口を利かなかったのに、ボクたちに勝った。
ボウリングにはチームワークって案外必要ないんだなと、ボクは思った。
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