番外(エイプリル企画)異世界に召喚されましたが、僕は【ハズレ】だそうです。
番外 1_異世界に召喚……?
お読みいただきありがとうございます。
エイプリル企画の【ネタ】で書いた番外で、主人公のセイと幻獣の仲間たちが召喚されて異世界転移してる内容になります。
ちなみに設定としては、竜人族たちが既に村作りを開始してる少し先の、未来のセイたちになります。
未来なので、番外の内容に本編のネタバレも軽く入ってます。
本当はエイプリル企画というのは4月1日だけ上げて2日には下げるものなんでしょうが、思いついて書き始めたのが3月30日の夜からだったので、当然のように話が終わってません。続きます。
※予定より大幅に長くなりました、2023年11月時点でまだ終わってません(途中で更新がストップしてた時期があったせいもありますが)。
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王都中心部にある神聖堂のひとつ、【神聖月司宮】にある儀式の間の中央。魔術士たちが石の床に描かれた魔法陣を囲むように等間隔で並び、詠唱を続ける。
じわりと魔法陣が輝き始めた。その光はどんどん強くなり、陣の模様に沿って帯状に広がっていく。そして、弾けるように儀式の間内の空間全てがパアッと白く輝いた。
眩しさがおさまると、魔法陣の上には人の姿──。
「おお、召喚に成功したぞ!」
「勇者が召喚された! 異界の勇者がっ、……ん?」
「
「……なぜ、勇者が二人いるのだ?」
喜びの歓声は、戸惑いのざわめきへと変わった。
一人は魔法陣の上に堂々と立っている金髪碧眼の二十歳くらいの青年。服装こそみすぼらしいが、顔は精悍で美しく、鍛えていると分かる細く引き締まった身体の持ち主だ。
一人は魔法陣の端っこの方で地面に尻をつけて座り、不安そうにキョロキョロと周りを見回している、白茶色の髪の小柄で地味な少年。見るからに気弱でひ弱。
どちらが【勇者】なのか、確かめるまでもなく明らか──その場にいる誰もがそう思った。
だから誰も……神官ですら、主神である女神に訊ねようともしなかった。
──「この国を苦しめている【狂鳥チュンべロス】を鎮める為に召喚されたのは、青年と少年のどちらなのでしょうか?」と──。
・△・△・△・
【狂鳥チュンべロス】、それが勇者召喚を行ったこの【プフエイル王国】を苦しめている魔物の名前らしい。
時の流れを狂わせる強力かつ凶悪な魔法【時戻し】を使う魔物。……トキモドシってなんだろ。具体的には?
チュンべロスに襲われた村は、育ったはずの穀物野菜類が、一瞬で種に戻される……あー、それはキツイな。
他には、魔獣を倒しても、その場に元の状態のまま復活する。え、こわ。戦闘エンドレスだよ。
しかも、人間側が戦闘で怪我をして、それを治しても【時戻し】魔法を使われると“怪我をしていた時間に、身体の状態
国全部や世界そのもの時間が戻るわけじゃなく、魔法を当てられた部分の時間だけが戻される。……つまり?
騎士団を派遣しチュンべロスと対峙した場合で例えると、【時戻し】魔法をかけられた騎士団そのものは出発前の場所に戻されるが、日数そのものは経過している、と。……うーん、ややこしいな。
「だからだな、例えば今日王都を出発し、15日後に山でチュンベロスに遭遇したとするだろう。そこで騎士団が【時戻し】魔法をかけられたとする。すると、騎士団は王都に戻され、持ち物も出発前の状態に戻ってるが、国全体では日数がちゃんと経ってるから、日付は15日後のまま。“今日”には戻らないんだ」
なるほど……?
えーじゃあさ、持ってた食べ物はどうなってたんだろ。15日も経ってたら普通は腐るよね。鮮度も元通りになるのか気になるんだけど。……だよね?
そこらへんもうちょっと詳しく……あ、違う話題に移っちゃったよ、もっと突っ込んで聞いて欲しかったねー。
召喚されたものの【ハズレの方】と判断されてしまった、気弱でひ弱に見える少年──セイは、
セイがいるのは、勇者様歓迎パーティーの会場である。しかし、残念ながら招待されたわけでは、無い。
こっちの男は失敗だと、王族やら神官だのから何故か蔑まれてしまったセイは、馬車に乱暴に入れられ、変な塔に運ばれ、牢屋とまでは言わないまでも、狭い部屋に閉じ込められた。
さっさと抜け出した。
そしてカクレギノネコの能力で姿を消し、王城まで戻ってパーティー会場に忍び込み、立食形式の料理をみんなでパクパク食べ、周りの会話に聞き耳を立てて情報収集をしていたところだった。
(あー、そろそろ戻らないとまずいかな)
今までは会場にいる人たちは皆、勇者様と王族にばかり意識と視線を向けていたので、壁側に並んでる料理が勝手に減っていても気付かれなかった。
しかしとうとう、料理を食べに来る人が少しずつ増えてきてしまった。さすがにこれ以上はバレそうだ。
もう少し話を聞きたかったけどしょうがない、お腹も膨れたし帰ろっか。セイたちは最後にスイーツを食べて、普通に歩いて会場を後にしたのだった。
閉じ込められていた塔の小部屋に戻ると、部屋の中央の床に直に座り、両手をついて頭を下げている金髪幼女の姿があった。
確かこれは、アズキたちの言うところの、“土下座スタイル”。
女神がしていい姿勢じゃない。慌てて起き上がるよう伝えても、幼女女神は重石のように動かない。
「ごべんなざいぃぃいいいい!!」
やっと上げた幼女の顔は、涙と鼻水でべっしょべしょだった。この世界に召喚されて来た時も、女神像の後ろに隠れるようにして今みたいにギャン泣きしてたなー……。セイはその時のことを思い出して、遠い目になった。
・△・△・△・
セイの居た本来の世界では季節はまさに春、みんなでお昼ごはんを食べた後、良い天気だしちょっと昼寝してくるねと言って、セイは東の草原に向かった。
“外”へ出かける時は、なんやかんやあって色々増えた仲間がわさわさ付いて来る事が多いが、今回は村から出ない、ただのお昼寝。
一緒に付いてきたのはいつもの固定メンバーとは少し違い、いわゆる“初期メンバー”がメインだった。
みんなで木陰の下の原っぱに寝転んで昼寝をしていたら、突然、頭上の枝からフサフサ白ヘビがスルスルと降りてきた。
『 異界 の 神 より 頼まれ た 』
「……はい?」
『 場は 固定して おく 。 励め 』
「何に!?」
御師様の家の庭以外にも出られたのか、この白ヘビ様……驚いている内にセイの周りが白く光り始めた。見れば白ヘビ様の姿は既に消えている。早い。
相変わらず言葉の足りない白ヘビサマだな!! 温厚なセイもさすがに文句を口にしようとした。
「……えっ!?」
言葉が音になる前に、急にグイッと
瞬きをして目を開けたら、セイが居たのは変な模様が描かれた石の床の上。壁や天井に見たことの無い柄の装飾が施された広い部屋、ヒラヒラした外国っぽい服装と、金属鎧姿の沢山の大人たち。
祭壇には初めて見る女神像。その像の後ろから顔半分を覗かせて泣いている、宙に浮いた金髪の幼女。そして。
「異世界転移や! コレ、異世界転移やんな!? こんなん異世界転移しか無いわ! マジか、やった──!!!」
意味不明な絶叫をして、こんなに訳の分からない状況を何故か大喜びして、興奮で走り回っている、アズキ。
(……あ、これ、ダメなやつだ)
目眩がした。
冷たい石の床に座ったまま、セイは「もう一度寝て、起きたら実は夢でしたってならないかな……」などと現実逃避気味に考えて、ため息をついたのだった。
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