第27話・リーガの回想
カラーン、コローン……コロローン……。
お昼の鐘がなり仲間の騎士達が食堂に向かう中、リーガは彼らとは逆の方向に足を向けた。王宮の奥殿。そこには聖王の生活空間があり、家族しか立ち入る事の出来ない場所であるのに、彼は特殊な立場から聖王と共に食事を取る栄誉に預かっていた。
彼は王宮騎士団の長だ。これは実力で勝ち取った地位なのに、他の部署の者達には妻のおかげで出世したように見られ陰口を叩かれることもあった。
その奥殿の食堂にはすでに聖王と妻であるエリカ、そして娘のモニカがテーブル席についていた。
「おとうさま。はやく、はやく」
「来たか。リーガ。待っていたぞ」
と、手招きするのは5歳になる愛娘のモニカで、娘は綺麗な銀髪に青い瞳をしていた。早く座りなさいと聖王に言われてリーガは、妻の隣の席についた。聖王は上座の席につき、モニカは向かいの席でリーガを見てにこにこしていた。ここでは皆が席に着いてから聖王にならい、神へのお恵みを感謝して食事を取るのが習慣となっている。
リーガは下級貴族の子息だった。父はしがない文官で田舎暮らし。幼い頃から体つきが良く野畑を走り回り、山で熊を相手に力試しをしていたやんちゃ小僧だった。行動が当時からはっちゃけていて手を焼いた母が頼ったのが、王宮騎士団に所属していたことがある祖父だった。
引退していた祖父の教えを受けるようになり、気がつけば剣術に夢中になっていた。成人して王宮騎士の入団テストを受けて騎士団入りした。その頃には寝付くようになっていた祖父は安心したように息を引き取った。
祖父は徹底的に騎士道なるものをリーガに叩き込んだ。リーガは歩く騎士道と言っても良いくらい傾倒していた。
その彼が迷える子羊のような異世界人のエリカに会い、保護欲をかき立てられ面倒を見ることになったのはその祖父の影響かも知れない。
その後、彼女と恋に落ち結ばれたことに後悔はしていないはずだった。
エリカと結婚してから彼の周囲は大きく変わった。聖王から直々に王宮近くに屋敷を与えられ、妻は聖王の養女となった。
聖王は異世界人のエリカを慮り慣れない世界での家事や、育児生活はきつかろうと、乳母や数名の使用人まで付けてもらっていた。
聖王としては実の娘が異世界人である彼女を虐めていたことを払拭したい狙いがあったと思うが多少、行きすぎの面もあった。
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