第20話・あなたさまはいい人です
「そうね。それが本当なら随分と私は傷ついたのでしょうね。でも、今の私にはその時の記憶が無いから。何とも言いようがないわ」
私が苦笑すると、レブルは言った。
「王宮で聞いていたあなたさまの噂はあまり褒められたものではありませんでした。でも私の目から見たあなたさまは心優しい御方です。噂はあてにならないものですね」
「でも、非道な人物かもしれなくてよ。記憶がないからいい人ぶっているだけで」
「私は聞いたことがあります。人というのは記憶を失っていても元々の性質は変わらないものだと。そういう時こそ、隠れていた性格が露わとなるそうですよ」
「そうなの? あまり良く分からないけど」
「私から見たあなたさまはいい人だってことですよ」
レブルは自信を持って言った。
「ありがとう。そう言われると記憶を無くす前の私もそんなに悪い人ではなかったかもと思えてくるわ」
「エリカさまは良い御方ですよ。絶対に」
そうレブルに言ってもらい、リーガに言われて胸に蟠っていたものが解けていくような気がしてきた。そこへウィリディスが姿を見せた。
「朝から二人仲良く話をしていると妬けちゃうな」
「ウィル」
「あんまり僕の奥さんを独占して欲しくないな。レブル君」
「お邪魔致しました。部屋に戻ります」
レブルはウィリディスが現れたことでそそくさとその場を後にしようとした。それをウィリディスが引き止めた。
「まあ、待ってよ。レブル君。僕が来たからって部屋にすぐ戻らなくてもいいじゃないか? 二人で一体、何の話をしていたんだい?」
「レブルさんには私の心の蟠りをほぐしてもらっただけよ。あとあなたが私の為に造ってくれたこの屋上庭園を褒めてもらったわ」
「そう。レブル君。少しはきみの研究の切っ掛けになりそうかな? きみはエルドラント遺跡を調べていると言っていたけど、瘴気と遺跡の結びつきについては何か分かったかい?」
「残念ながらまだ何も分かっていません。今日も出来たら昨日のように街を見て回らせて頂けたらと思っております」
「そうかい。構わないよ」
「いいのですか?」
簡単に許可が出てレブルは驚いていた。ウィリディスは苦笑した。
「そんなに驚くこと?」
「あの。ご領主さまは昨日、私の連れがこちらのエリカさまの気分を害したことを怒ってはおられないのですか?」
「僕がなんと言ってもその件について判断するのはエリカだからね。エリカが問わないと決めた以上、僕が口を出すことではないと思うし、きみの件とは別件だから」
「ありがとうございます。温情に感謝致します」
ウィリディスも裏表のないレブルの態度には好感を抱いているようだった。
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