第21話・瘴気とはそう簡単に無くすことは出来ないものなのですね?



「レブル君。遺跡について調べるのはいいけれどあまり深入りするのはお勧めしないよ。遺跡というものには色々と禍根が残されている物だからね」

「私は聖職者ではありませんが、この街は遺跡の上に立っているのに常に清浄な気が満ちているように感じられます。それはあなたが何かその方法を編み出したのではないですか?」


 私はウィリディスの態度におやっと思う。レブルの研究に興味をしましておきながらもあまり調べて欲しくなさそうに思ったから。


「とんでもない。ここの瘴気は僕一人の力では浄化出来なかったよ。エリカが一緒だったから出来たことだ」

「エリカさまが?」

「彼女は浄化する聖魔法が扱えたからね」

「そうでしたか。エリカさまは聖王さまのご息女ですから当然でしたね。でも、この街を始め、その力はその一体に及んでいるということですか?」

「ああ。彼女は何も知らないままこの地へ来て、この地に共鳴し、祈りを捧げてくれたんだよ。これは彼女にしか出来ないことだった」

「さすがはエリカさまです」


 感心したようにレブルは言ったが、私は特に何もしていない。深い悲しみに暮れる私を慰めてくれたウィリディスや、他の人達の為に何かお礼をしたいと言ったら彼が「この地の為に幸せを祈ってくれないか?」と言ったからそうしたまでで、大した事をしたような覚えはなかった。


「ではエリカさまが各地の瘴気を癒やして回れば──」


 ふと思いついたように言ったレブルに、ウィリディスは最後まで言わせなかった。


「それは無理だよ。もともとここの瘴気は歴代の領主達が一生をかけて浄化してきていて、僕の代でようやく実ったようなものだ。勿論、エリカの力も加わって思ったよりも早く浄化出来たけどね」


 ここの土地の瘴気を浄化する為に、世代を超えて長い年月がかかったのだと聞いてレブルはがっかりしていた。


「瘴気とはそう簡単にはなくすことは出来ないものなのですね」


 深刻なレブルの表情に放っておけないものを感じる。腰にウィリディスの腕が回されていた。背後から抱きしめられている。彼としては私が余計なことに首を突っ込もうとしているように感じられて不安になったのだと思う。

 私はただ、知りたかった。レブルがどうして瘴気に拘るのかを。





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