第10話・失った過去を蒸し返すな
ウィリディスはリーガに、私の失った過去を蒸し返してくれるなと言った。ウィリディスは、私の為にも過去を思い出させるような事はしたくないと言ってくれた。
それに対し、リーガは思うところはあったようだが何も言わなくなった。黙り込むリーガを前にしてウィリディスはレブルに言った。
「きみは研究の為にこの街を調べたいんだろう? 二、三日の滞在許可を出してもいいよ。その代わりエリカの過去には触れないことが条件だ」
「本当ですか? それはありがたいです。なあ、リーガ」
レブルは研究意欲を刺激されてか、私の過去に触れないことをすぐに了承した。後はリーガのみだ。リーガも本来の目的を思い出したのか渋々了承した。
私も自分の過去は気になっているけど、ここに来た当初の悲痛な思いは感じ取っている。記憶を無くす前は王都にいたというのはうっすらと覚えている。でも幸せだったような気はしない。
幸せだったならここに来ていない気がするし。この地に来たのは王都を追い出されたような何かがあったような気はしている。
「オーブリー。彼らを客間に案内してくれ」
「畏まりました。お客さま。ではお部屋にご案内致します」
レブル達はオーブリーの促しで部屋から退出して行った。
「エリカ。大丈夫?」
「大丈夫よ」
ウィリディスは私のことを心配していた。彼は私に過保護すぎる。レブルのような好奇心を抱えてこの地を訪れる者を彼が厭うようなことはない。
レブルは瘴気と遺跡について調べていると言った。瘴気とこの地は馴染み深い。彼の研究に少しでも役に立つことがあるのならとウィリディスは考えたのだろう。
王都から来た者をこの優しいご領主さまは皆、嫌うわけじゃない。王都からやってきた私を不憫がって受け入れたように。
「ウィル。私のことは気にしないで」
もう大丈夫だからと言えば、彼は泣きそうな顔になっていた。
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