第8話・あなたは私の知り合いですか?
「初めまして。ご領主さま。私は学者のレブルと申します。隣にいるのは護衛のリーガです。私は瘴気や遺跡を研究していまして、ここにあった古の都エルドラントの足跡を追って参りました。どうかここを調べる許可を頂けないでしょうか?」
「エルドラントについて調べているの? あそこは忘れられた遺跡だよ。そんなのを調べてどうするの?」
「エルドラント遺跡からは強い瘴気が常に生まれていたと古書に書かれていました。その中で文明が栄えていたとも。私はエルドラント遺跡では、瘴気を上手く循環する為の装置を発明していたのではないかと思っています。その為の証拠となるものがこの街にあるではありませんか? 私の記憶している限りでは……」
「エリカ姫?」
「あなたは……?」
ウィリディスの追及にレブルが説明をしている中、護衛と紹介を受けた男リーガが私を見て訝る様子を見せた。
その反応に彼は私の過去と係わりがあったのではないかと思った。
「あなたはわたしの知りあ……?」
急に視界が歪む。ウィリディスは私の言葉を最後まで言わせなかった。その場から都合の悪いものを隠すかのように私達を転移させた。彼の「余計な事を」という苛立った呟きが耳に残った。
「ここは?」
「僕の城だよ」
「これは転移魔法? 凄い。話には聞いておりましたがほんの一瞬なのですね?」
ウィリディスは二人を転移魔法で住処の古城へと招いた。彼らといるのは城の中にある応接間。レブルは外にいたはずなのに瞬きするかしないかのうちに古城の中にいたものだから驚いていた。リーガはあ然としている。
「僕は今ではペイドン辺境伯という爵位を持っているが、以前は王宮に仕える魔術師だった」
「そうでしたか。いやはやかたじけない。調べ物以外には気を向けない質なもので」
彼らの疑問に答えるかのようにウィリディスが言った。学者馬鹿なので世情に疎くてと、レブルは頭を掻く。
それを気にした風でもなく、ウィリディスは壁際に控えていた執事のオーブリーに指示を出した。
「オーブリー。客人だ。お茶を用意してくれ」
「はい。畏まりました」
「まあ、座ってよ」
ウィリディスは私の腰を引いて、二人に向かい側のソファーに腰掛けるように促す。二人は一人掛けのソファーにそれぞれ腰を下ろした。
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