第7話・北門からやってきた不審な男達


「何事かしら?」

「気になる?」

「ええ。ご領主さまとしては気にならないの?」

「仕方ないな。行ってみよう」


 すぐに旅装姿の男達は自警団に促されるようにして自警団本部の建物の中へと連行されていった。それから目を離せないでいると隣から不満そうな声が上がった。

 彼としては二人きりでいるせっかくの休日を邪魔されたように思われて面白くないようだ。

 少し子供っぽいところがある彼に「お仕事ですよ」と促せば、渋々彼らの向かった先へと歩き出した。

 自警団の建物に入ると、そこに詰めていた自警団員がわらわらと頭を下げてくる。その前を先へ進むウィリディスの後についていけば、奥の部屋から男達の声がしてきた。彼らはこの部屋にいるらしい。


 部屋の中では尋問が行われていた。皆、そちらに集中しているせいか、後から入り込んだこちらには全く気がついて無い様子だ。


「私達はけして怪しい者ではない。私は遺跡と瘴気について調べている学者レブルで、この者は私が雇った護衛のリーガ。ここに身分証明書もある」


 赤毛に眼鏡をしている中肉中背の男性はレブルと名乗り、この世界の各国で共通となっている身分証明証を自警団隊長に提示して見せていた。彼から護衛と紹介された金髪に青い目をした体躯の良い男、リーガも冒険者証を出しているようだ。


「なるほどなぁ。でも招待状がないと悪いがここを通すわけにはいかない。お帰り願うことになる。あんたらは王都から来たみたいだがどうやってこの街の存在を知った?」

「我々はエルドラント遺跡を調査しに来ただけだ。まさかここにこんな美しい街があったとは思わなかった」


 仕事柄、検問する立場にある自警団の隊長は男達への疑いを隠さなかった。まるでこの街の存在を王都側に知られて困るような言い方に聞こえる。

 学者を名乗った男レブルも、偶然ここにはたどり着いたように言っていた。

 もしかしたらそこに私の知らない何かが隠されているように感じ取られて気になった。


「そうは言われても俺たちにはどうすることも出来ない。決めるのはご領主さまだ」

「ご領主さま? その御方はどちらに?」


 この二人組をどうするかの決定権は領主が持っていると自警団長に言われてレブル達は戸惑っているようだ。そこへ戸口で様子を窺っていたウィリディスが声を上げた。


「ここにいるよ」

「ご領主さま?!」


 皆はこの場にウィリディスが現れるとは思ってなかったようで驚いていた。自警団隊長らは慌てて頭を下げてくる。レブルやリーガもそれにならった。


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