070 土風ダンジョンボス

 転移先は陽の光が届かない深い森の中だった。ダンジョンの中とは思えない景色だ。


「うわぁ。正面の木、凄く大きいな」


 ロキ達の眼の前には幅30メートルはありそうな巨木が在った。


「あれは、ロックツリーだな。表面が石で出来ているのだが、それにしても大きいな。もしかしたらロックツリーが進化してロックマザーツリーになったのかもしれん」


 巨木の表面は白っぽく石のような質感となっている。葉も全て白い。


「あんな大きな木倒せるかなぁ?」


「みんなで頑張ればなんとかなるんじゃない?」


「よし、やってみよう!」


「作戦はどうするんです〜?」


「僕とアルエが敵の攻撃を引き付けつつ攻撃してみるよ。もし、傷が付けられたら傷口に魔法を撃つっていうのはどう?」


「了解〜」


「行くよアルエ!」


「はいマスター!」


 ロキとアルエが左右に別れて走り出す。


 敵意に気づいたロックマザーツリーはバッサバッサと枝を揺らし、葉を撒き散らす。


「オオオオオオオオ!!」


 地面から響いてくるかのような音が聞こえ、突如目の前に竜巻が発声する。


 竜巻にはロックマザーツリーの葉が含まれており、巻き込まれたら挽き肉になってしまうだろう。


「【死鎧デス・アーマー】!」


 ロキはスキルによりダメージは無いが、竜巻によって上空に巻き上げられてしまった。普通の冒険者であれば、このまま落下して良くても大ダメージを負うだろう。


「【死飛翔デス・エアー】」


 空中を走ってロックマザーツリーの根元に降り立った。


「【聖なる光の剣クレイヴ・ソリッシュ】!」


 光が木にぶつかり、表皮を削っていく。光が収まると、木の表面は大きく削れて中の脆い部分が見えている。


「今だ!」


「ファイア!」


「ウィンド!」


 シャルとイーヴァルディの魔法が同時に発動する。


 火魔法に風が送り込まれ、猛烈な火の風となって傷口を焼いていく。


「オオオオオォォォォォ!」


 ロックマザーツリーの根元から根か蔓かが飛び出し壁となった。


「失敗か、シャルとイーヴァルディは一旦下がって!」


 シャルとイーヴァルディは安全地帯まで下がった。


「じゃあ、とっておきの方法を試すしかないね。サラ、準備はいい?」


「うむ、最高級の油で手を打とう」


「いくよ、【死飛翔デス・エアー】」


 ロックマザーツリーの蔓を掻い潜り、木の上まで飛ぶ。


「3、2、1、頼んだよ!」


 サラがランプから飛び降りる。ロックマザーツリーを上から見ると中に樹洞という空洞がある。そこにサラが飛び込んだのだ。


「プロミネンス」


 サラは内部で上位の火魔法を発動した。巨大な火柱が昇り、幹も葉も燃やし尽くす。


「ォォォォォォォォォ……」


 ロックマザーツリーは燃え尽きた。


 自慢気なサラが燻る煙の中から出てきた。


「さすがサラ!」


「我にとっては簡単なことだ」


 ロックマザーツリーの灰の中から宝箱が出てきた。アルエがこちらを伺ってくるので無言で頷くと宝箱を開けた。


「綺麗なローブですね〜」


 中にはローブが入っていた。薄緑色と黒色のデザインだ。


「気に入ったならロザリーさん着てみる?」


「いいんですか〜?」


「いいよ、みんなもいい?」


「ロザリーお姉ちゃんに似合うと思うよ!」


「マスターに従います」


「あたいも賛成!」


 ローブはロザリーさんにあげる事に決定した。


「今回我が一番の貢献者なのだということを忘れるでないぞ!」


 サラの叫びが木霊した。

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