067 土風ダンジョン2

 次の日の朝早く、ロキは早起きしてとある物を作っていた。それは船だ。もう泥の中を歩きたくないという一心で思いついた秘策である。


 だが、ロキは手先が器用というわけではないし、船を作ったこともない。作っているのは、イカダというかただの木の板のようなものである。


 収納胃袋にはどんな状況になっても良いように木材も入れてあったのだ。


「おはよう!」


 シャルが起きてきて元気に挨拶をする。


「おはようシャル」


「何を作ってるの?」


「イカダだよ。もう泥の中を歩きたくないからね」


「その意見にあたしも賛成!」


 朝食の時間になる前にはイカダを完成させることが出来た。見た目は悪いが、泥の上は歩かずに済むだろう。


 朝食後、出発の準備が終わると収納胃袋からイカダを取り出す。


「それじゃあ、やるよ。【死んだふり】!」


 イカダの下側だけにスキルをかける。これで泥の中でもスイスイ進めるだろう。


 イカダを泥の上に置くと、泥の上に浮かんだ。全員乗ってみたが全く沈む気配もない。


「成功だ!これで泥の中を歩かなくて済むし、休憩し放題だね」


 帆を張って、風を受けるとイカダは進みだした。


「これいいね!」


 昨日の苦労は何だったのかと思うほど簡単に進むことが出来た。半日ほど進むと祭壇があり、祭壇には次の階層に進む魔法陣が描かれていた。


 次の階層に転移すると、そこは突風吹き荒れる崖だった。


 崖には石の橋がかかっているのだが、手すりはなく、横からの突風で飛ばされたら崖下に落下するだろう。


「うわ、この橋はどうやって渡るんだろう?」


「こんな突風が吹いたら渡れないよ」


 そんな話をしていると、風が止んだ。


「あれ?風が止まった?」


「今なら渡れるかもしれないけど、途中で突風が吹いたらと思うと恐いよね」


「5〜6〜……30〜。ちょうど30秒くらいですね〜」


「30秒だと全速力で走ってギリギリだなぁ」


「ロザリーお姉ちゃんは脚が遅いから無理じゃないかな?」


「そうね〜私には無理だと思います〜」


「あたいもそこまで速く走れないよ」


 これは何か策を考える必要がありそうだ。


「マスター、ワタシが皆をロープで引っ張りながら全力で走るのはどうでしょうか?」


「アルエ、なかなか良い案だけど、多分みんなついていけないよ……」


 アルエに引き摺られて怪我だらけになる未来しか見えない。そして最終的にロザリーさんに怒られるのだ。


「みんなで一気に渡る方法はないのかなぁ」


 シャルが呟く。


「あ、いけるかもしれない!」


 前の階層で使っていたイカダを収納胃袋から取り出す。


「まさか、イカダに乗るの?」


「そうだよ。イカダをスーパーアルエカノン砲みたいに飛ばせばいいんだよ」


「そっか!でも、それだとロキは置き去りになっちゃうんじゃない?」


 スーパーアルエカノン砲は【死撃デス・バレット】で撃ち出す為、ロキは置き去りになってしまう。


「大丈夫、【死撃デス・バレット】は使わずにサラのファイア加速と【死飛翔デス・エアー】でイカダを押し続けるからさ」


「あたいもファイアで加速を手伝うよ!」


「じゃあ、次に風が収まったら行くよ!」


「「「おー!」」」


 ロキ以外の全員がイカダに乗って待機する。ロキはイカダの後方から押すような形になる。


「風が〜収まりました〜」


 ロザリーさんの合図で開始する。


「ウィンド!」


 シャルがイカダを浮かせる。


「「ファイア!」」


 イーヴァルディとサラがファイアを後方に撃って加速する。


「【死飛翔デス・エアー】!」


 全力でイカダを押す。イカダはどんどん加速し、最高速度に達した。橋の向こう側が見えてきた。


「あと5秒です〜3、2、1、突風来ます〜」


 マズイ。まだ橋を渡りきっていない。横から突風が吹き付けてくる。


「キャーーーー!!」


 突風によってイカダの進路が変わり、橋から落ちる!


 と思いきや、イカダは浮いて空を飛んでいる。シャルのウィンドのおかげで落ちなかったのだ。


 そのまま飛び続けてなんとか対岸にたどり着いた。


「もう終わりかと思った!」


「びっくりした〜」


 対岸には次の階層への魔法陣があった。この階層の攻略時間はとても短く済んだけど、難易度はもの凄く高かった。


 突風のせいで休憩も出来ないので、すぐに次の階層に移動した。


 次の階層は洞窟だった。休憩も出来そうだったので、その場で1泊することにした。

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