045 クラン対抗戦開始

 亀を降りる際に羊皮紙を手渡された。紙には、こう書かれていた。

 1.羊皮紙に描かれた★マークを一番多く集めた者が勝者

 2.島から出たら失格とする

 3.相手を殺した場合、失格とする

 4.亀の周囲100メートル以内で5分以上待機または戦闘を行った場合、失格とする

 5.冒険者ギルド職員は腕に黄色いハンカチを付けてルール違反者の監視を行う

 6.冒険者ギルド職員に危害を加えた場合、失格とする

 7.★はクラン所有のもの以外に島の各地に隠されている

 ーーーーーーーーーー

 ★



 ご丁寧に羊皮紙には切り取り線があり、★が描かれた部分を簡単に切り離すことが出来そうだ。


「みんな、亀を降りたら森に走るよ!すぐに安全な場所を見つけないと狙い撃ちされちゃうからね」


 みんなで足早に移動しながら亀から離れていく。亀の周囲100メートル以内に居れば戦闘は起きないが、5分以上は居られない。


 そろそろ100メートル以上離れたと思った瞬間、木の陰から5人組の男達が姿を現した。


「げっへっへ。お嬢さん、俺達と楽しいことしようぜ?」


「お断りします!」


 シャルがロキの後ろに隠れる。


「俺達は、クラン【暴龍族】だ。一度くらい聞いたことあるだろ?」


「ありません。消え失せなさい」


 アルエの言葉に男達の顔に青筋が浮かぶ。


「このアマ!力ずくでやってやろうか!?」


「皆さん〜怪我に気をつけてくださいね〜プロテクション〜」


 ロザリーさんの支援魔法が戦闘開始の合図となった。


「【死拳デス・ストライク】!」


「うべっ」


 先頭に居た男は吹き飛び気絶した。なんて弱いんだろう。あっけなさすぎる。


「こ、こいつ強えぞ!ただのガキじゃねぇ!皆で一斉にかかれ!」


 4人の男達が剣を振り上げこちらに走ってくる。


「動きが遅いね!【死地雷デス・ランドマイン】!」


 ロキが左手をクンッと上げると、4人は上空に吹き飛び地面に叩きつけられた。全員気絶したようだ。


「一人で全員倒すなんて凄いね!」


 シャルが笑顔で褒めてくれた。


「ありがとう。羊皮紙を奪ったら予定通り安全地帯を探そう!」


 皆は緊張感を取り戻すと森に向かって走り出すのだった。


 森を進むと突き当りに崖があった。


「この崖を削って穴を掘ればシェルターの変わりにはなりそうだね」


「森の中でテントで過ごすよりは安全かと思います」


「じゃあ、穴を掘るからみんな離れててね」


 みんなが離れたのを確認したら崖に手を当ててスキルを使う。


「【死地面デス・グラウンド】」


 崖の一部がさらさらと砂になり、砂を掻き出すと奥行き5メートルほどの横穴が開いた。


「これくらいでいいか」


「そのスキル〜便利ですねぇ〜お風呂も作れますかぁ〜?」


「すみません、ロザリーさんお風呂を作るのは難しいです。でも、お風呂に入ることは可能ですよ!」


 なんと、収納胃袋の中に風呂と大量のお湯を入れて持ってきたのだ。


「さすが、ロキさん気が利いてますねぇ〜。結婚してあげましょうか〜?」


「ダメだよロザリーお姉ちゃん!ロキはあたしと結婚するんだから!」


 シャル?初耳なんだけど?


「マスターがどなたと結婚しようともワタシは付き従います」


「ああもう分かったから、今はそれどころじゃないでしょ!?シャルは周辺に罠を仕掛けてきて!ロザリーさんは薪拾いをお願いします。アルエはロザリーさんの護衛をして!」


 矢継ぎ早に指示を出して、なんとか恥ずかしさを誤魔化すことに成功した。


「ロキよ、大変だな」


「ランプの精霊は気楽でいいよね」


 僕は更に奥まで掘り進めて各自の部屋を作ることにした。


「【死地面デス・グラウンド】【死地面デス・グラウンド】【死地面デス・グラウンド】」


 そして収納胃袋から家具や寝具を取り出して設置していく。これでとりあえずは一時的な生活拠点が出来上がった。


 このクラン対抗戦は期限が提示されておらず、過酷な環境で生き残る技術が必要という側面も持っている。


「罠設置したよー!うわ、部屋が出来てる!」


「シャルの部屋はここだよ」


「ありがとー!」


「あら〜、私の部屋はどこかしら〜?」


「ロザリーさんはシャルの隣の部屋だよ。アルエはこっちね」


「了解です」


「拠点は完成したから、次は★集めだね。今は自分達の分を合わせて★2つだけだね」


「他のクランを倒してもっと★を増やそうよ!」


 シャルは戦闘狂なのだろうか?


「島の各地に★が隠されているとも書いてありますねぇ〜」


「よし、まずは島の各地に隠されている★を集めよう!どうせ最後はクラン同士の戦いになるだろうからね」


「オッケー!じゃあ、各自で探すの?」


「さすがにソロは危険だから、アルエとロザリーさんチームと、僕とシャルのチームで★を集めて来よう。サラはこの拠点を守ってね」


「ふむ、いいだろう。拠点は我が護る」


「よろしくね!じゃあ、★2つはサラに預けておくよ」


「うむ、安心して行って来るがよい」


 シャルと★集めに行く事が決まった。

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