第3章 金級

036 新たな出会い

 翌朝、というか既に昼になっているが、起床したロキ達はホットフット村の冒険者ギルドに討伐達成の報告を行った。


「はい、たしかに討伐したことを確認しましたよ。王都の冒険者ギルドにも連絡しておくから安心しとくれ」


「ありがとうございます。僕達はこれで王都に戻ります」


「ああ、村を救ってくれてありがとうよ」


 受付のお婆さんに挨拶をするとホットフット村を後にした。


 帰りも魔物に襲われたりロックゴーレムと戯れたりしつつ、久しぶりの王都に戻ってきた。


 拠点に戻ると、庭は雑草だらけ、家の中は少し埃っぽいような状態だった。


「うわー、ちょっと王都を離れただけでこんな雑草だらけになるんだね」


「マスター、命令してくださればワタシがキレイに致します」


「いや、アルエに悪いから皆で掃除しよう。ギルドへの報告は明日でいいよね」


 一日中掃除をして、拠点はキレイになった。


 次の日、冒険者ギルドで報告を行うと、ギルドマスターの部屋に通された。


「よくやった!これでお前達は金級だ!今後は依頼の難易度が上がるだけでなく、冒険者としての品位も必要となってくる。間違っても冒険者の品位を貶めるような行動はしてくれるなよ?」


「はい、分かりました」


「うむ、頼んだぞ。受付で冒険者プレートを受け取ったら帰っていいぞ」


 ギルドマスターの部屋を出て、受付に行くとベリンダさんが冒険者プレートを用意して待っていた。


「ロキ君、シャルちゃん、アルエちゃんの冒険者プレートよ。アルエちゃんは特例として銀級に昇級したわよ」


 冒険者プレートを受け取った。


 名前:ロキ

 スキル:死んだふり

 級位:金

 ランキング:7000位



「ありがとうございます。金のプレートだ〜」


 金の輝きを見るとここまで来たという実感が湧いてきた。


「キラキラしてて綺麗だね!」


 シャルは気に入ったようだ。


「次は師匠のところに報告しなくちゃね」


「はーい」


「了解です」


 次は城に行き、師匠に金級に上がったことを報告した。


「おおーそうか!金級まで上がったか。丁度いいタイミングだ!」


「何が丁度いいんですか?」


「何がって冒険者ギルドで聞いてないのか?3ヶ月後、各級位で誰が一番強いのかを決めるトーナメントが行われるんだ。そこで1位になれば特例として昇級されるんだぞ」


「ええ!そんなこと一言も聞いてませんよ」


「ガルググの奴。俺に説明を押し付けやがったな。今度会ったら酒を奢ってもらおう」


「それで、僕はどうすればいいんですか?」


「トーナメントに出場しろ。そして1位を獲れ。以上!」


「命令が乱暴すぎませんか!?」


「ちゃんと特訓はしてやるから安心しろ。地獄の特訓だがな」


「ひいい!」


 師匠の用意した地獄の特訓がその日から始まった。ほんの3時間でロキとシャルはボロボロになり、帰宅することになった。


 ボロボロの状態で王都を歩いていると不意に声をかけられた。正確には僕ではなく、シャルに声をかけてきた人物が居た。


「もしかして、シャルちゃんじゃないですか〜?」


 その人物は、白いローブを着た神官風の女の人だった。


「あ!ロザリーお姉ちゃん!こんな所で何してるの?」


 一瞬、姉妹?と思ったが、どう見てもロザリーさんはエルフではない。


「私はついさっきなんだけど〜パーティーから追放されちゃったのよ〜」


 のんびりとした話し方でショッキングな内容を語るロザリーさん。


「え!?ロザリーお姉ちゃんって金級だったよね?」


「そうよ〜。これでも優秀なヒーラーだと思ってたのよ〜。ヒールが恐いから抜けてくれってどういう事〜?」


 追放の理由が謎すぎる。だが、その疑問はこの後分かることになる。


「じゃあ、ロザリーお姉ちゃんもロキのパーティーに入れて貰えばいいじゃん!ついでにクランも!」


「パーティーに入れて貰えますかぁ〜?」


「うーん、シャルの知り合いだし、このパーティーに回復役は必要だもんね。歓迎します!」


「ありがとぉ〜。早速、怪我がないか見てあげるわねぇ〜」


 ロキの身体を細かくチェックしていくロザリー。すると、ロキの膝の擦り傷から少し血が滲んでいるのを発見したロザリーの双眸そうぼうがカッと見開かれた。


「怪我してんじゃねぇかオラー!ヒール!」


「え……?」


「ロザリーお姉ちゃんは怪我を見ると性格が変わるんだよ」


「これで大丈夫ですよぉ〜」


「あ、ありがとうございます」


「どういたしまして〜」


 これが追放の原因だろうな。絶対に怪我はしないと決意したロキであった。


「僕達は拠点に帰りますが、ロザリーさんはどうしますか?」


「クランの拠点があるの〜?それは素敵ですねぇ。私の部屋もあるのかしらぁ?」


「はい、部屋はまだまだありますから大丈夫ですよ」


「じゃあ、宿の部屋を引き払ってそちらに引っ越しますね〜」


「やったー!ロザリーお姉ちゃんと一緒に暮らせるんだね!」


 シャルとロザリーは嬉しそうにしているし、結果的には良かったと思うロキであった。

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