031 大将戦

 戻ってきたアルエとハイタッチする。


「三本勝負だから、僕達の勝ちだね」


 ウィリアムは親の仇でも見るかのような目でロキを睨みつける。


「いや、三本勝負だが、大将が勝利したら3勝分とする!次の戦いに勝ったほうが勝ちだ」


「ルールを後から追加するのは大人としてどうなのかな!?」


 あまりに馬鹿らしい提案に思わずツッコミを入れてしまった。


「さぁ、構えろ!」


 ウィリアムは勝手に進み出て、早く勝負するようロキに促した。


「ハァ……仕方がない。そのルールでいいよ」


 ロキも決闘の場に進み出て、ショートソードを構えた。


 ウィリアムが持っている剣が輝き始める。聖剣クレイヴ・ソリッシュだっけ?見た目はカッコイイ。


「くらえ!【聖十字架ホーリー・クロス】!」


 ウィリアムの剣から光の十字架が出現し、こちらに飛翔してくる。ダメージを受けないかもしれないが、念の為防御する。


「【死盾デス・シールド】」


 聖なる十字架は弾かれ砕け散った。


「やはりダメか。ではこれはどうだ!【聖域陣サンクチュアリ】」


 聖域が広がり、ウィリアムと僕を包み込む。


「僕のことアンデッドと勘違いしてない!?」


 ロキはアンデッドではないので勿論ノーダメージだ。ロキは師匠との実戦訓練の通りに、ウィリアムの懐に飛び込むと拳を突き出した。


「【死拳デス・ストライク】!」


「そいつはもう見た!」


 ウィリアムは紙一重で避けると斬撃を放つ。


「【聖斬セイントスラッシュ】!」


「【死鎧デス・アーマー】……うっ」


 スキルで防ごうとしたが、ギリギリ間に合わなかった。ロキは腕に大きな太刀傷を負い、腕からは血が滴っている。


「ハッハッハ!どうだ!負けを認めるなら今の内だぞ!」


「……」


 ロキは負けを認めなかった。


「ならば、これで終わりだ!」


 ウィリアムは大きくバックステップし、聖剣が強く輝き始める。


「ウィリアム様!その技はおやめください!街が大変な事になります!」


 ゴドウィンが何やら不吉なことを叫んでいる。あの技は危険すぎると本能が警鐘を鳴らす。


 ロキは瞬時に覚悟を決めた。


「【死拳デス・ストライク】!」


 地面を思いきり叩くと反動で空高く飛び上がった。空に向けさせれば被害が最小限になると考えたのだ。


「馬鹿め!空に逃げ場はないぞ!くらえ!【聖なる光の剣クレイヴ・ソリッシュ】!」


 光の奔流がロキに迫る。


「【死鎧デス・アーマー】!」


 そしてロキは光に包まれた。


 光が消えた後、ロキの姿はどこにも無かった。


「どうやら俺が勝ったようだな」


 ウィリアムが空を見上げながらニヤリと笑う。


「そんなの嘘だよ!ロキが負けるはずない!」


 見上げていたシャルの目から涙が溢れる。


「シャル、よく見るのデス」


 アルエが空を指差している。空をよく見るとポツンと点が見える。


「馬鹿な!あの技を食らえば塵も残さないはずだ!」


 ウィリアムは驚きと悔しさでギリリと奥歯を噛み締めた。


 ロキは猛スピードで剣を構えながら落ちてくる。ウィリアムも迎え討とうと聖剣を構える。聖剣が光り輝く。


「【聖なる光の剣クレイヴ・ソリッシュ】!」


「【死鎧デス・アーマー】!」


 今度はロキの勢いが勝った。しかし、着地地点が少し逸れてウィリアムの横に落下する。


「ぐっ!」


 衝撃でウィリアムは吹き飛ばされた。ロキもウィリアムも倒れている。が、ロキはすぐに立ち上がった。


「僕の勝ち?」


「大丈夫ですか!?ウィリアム様!」


 ケネスとゴドウィンがウィリアムを助け起こしている。


「あたし達の全勝だね!聖剣をくれるって約束だよね?」


 シャルが言うと、ゴドウィンは無言でウィリアムの聖剣を差し出した。


「ウィリアム様は聖ガルド教皇国の第三王子だぞ。この事は国に報告するからな!お前達は終わりだぞ!」


 ケネスが捨て台詞を吐いて去って行った。


「ふぅ、それじゃあ冒険者ギルドに行って拠点の契約を進めよう」


「聖剣も貰ったし、結果的には良かったよね!」


 シャルはそう言うけど、聖ガルド教皇国に狙われる可能性が高いだろうなぁ。

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