021 謎の遺跡

 砂埃を巻き上げて扉が開く。地下への階段が続いている。階段の奥は真っ暗なので、サラがランプをつけた。


 階段は螺旋階段となっており、永遠とも思えるほど下っていく。同じ景色が続くため時間感覚が狂い、精神的にも苦痛を強いられる。どこまで降りるのか引き返すべきか不安になる。


「こんなに降りるってことは帰りは同じだけ登るってことだよね……」


「何を当たり前なことを言っている」


「サラはランプの中だから楽でいいけど、この階段は長すぎるよ」


「うへぇ〜」


 後悔しながら進むとようやく最下層に着いたようだ。扉が1つだけある。扉を開けると、見たこともない光景が広がっていた。


 壊れた金属製のゴーレムのようなもの。怪しげな液体が入った瓶。見たこともない道具類。錬金術の研究施設だろうか?


 一番奥には、完全な形で保存されている金属製のゴーレム(?)が置かれていた。ロキはそれを見た瞬間に感じた、【死んだふり】をしているのだと。


 ロキはその金属のゴーレムの前に立った。


「ロキ、これが何か分かるの?」


 シャルがロキに尋ねる。


「分からないけど、多分死んだふりをしているみたいだ。僕なら起こせるけど、どうしよう?」


「起こしちゃおうよ!」


「我はどちらでもいいが、やるなら早くしてくれ。油が減ってしまう」


「じゃあ、やるよ」


 復活しろと念じる。


『スリープ解除の信号を受信しました……スリープ解除を実行中です……起動しました……マスターを認識……マスターの情報を更新しました……ボディを最適な形状に変更します』


 ゴーレムから白い煙が上がり、しばらくすると煙の中から裸の女の人が体を起こした。


「わわっ!ロキは見ちゃダメだよ!後ろ向いて!」


 シャルに怒られて後ろを向く。シャルが持っていた予備の着替えを着せたようだ。


 女の人はロキの前にひざまずく。


「マスター、何なりとご命令ください」


「えええ!ロキとはどういう関係ナノ!?」


 シャルが驚いているが、本当に驚いているのはロキの方である。


「聞きたいのは僕の方だよ。マスターって何?」


「ワタシはRA-7。ワタシを作った創造主の命令により、アナタをマスターと認定しました」


「うーん、起こしたのが不味かったのかな〜?」


「RA-7ちゃんってなんだか言いにくいよね。アルエちゃんでいいんじゃない?」


 シャルは何故かあだ名を決めて仲良くなっている。


「アルエは僕達と来るつもり?」


「はい。ですが、ここに留まれと命令されれば従います」


「さすがに可哀想だからそんな命令はしないよ。一緒に行こう」


 謎の遺跡でアルエが仲間になった。


「あ、寝袋1個しかないけど、どうするんだろう……」


 ロキは悩みの種がまた1つ増えたのだった。

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