011 更なる修行
ロキは急いで王都に戻った。冒険者ギルドに報告することも忘れて城に行くとイーリアス師匠に魔法の腕輪について相談した。
「師匠!ゴブリンダンジョンを攻略して魔法の腕輪を手に入れたんですが、どうしたらいいですか!?」
「はぁ?そんなもん、装備するか売るか、二択しかないだろ?」
「でも、この腕輪がどんな効果があるか分からないんですよ」
「ああ、鑑定なら鑑定士に頼むか、鑑定用の道具を使えばいい。城の鑑定士に頼むか?」
「じゃあ、お願いします!」
イーリアス師匠に魔法の腕輪を渡す。
「腕輪はいいとして、ゴブリンダンジョン攻略よくやった!だが、所詮は初級ダンジョンだ。もっと上を目指すなら更なる特訓が必要だ」
「ありがとうございます!どんな特訓でも耐えてみせます!」
イーリアス師匠がニヤリと笑う。
ロキは勢いで言ってしまった後に、何を言ってしまったのか理解した。
「どんな特訓にも耐える、と言ったな?」
「あ、いえ、言いましたけど、ちょっとニュアンスが違「言ったよな!?」」
「はい!」
「よーし、弟子にそこまで言われたら特別メニューを考えなければいけないな。今日はもう帰って明日を楽しみにしておけ」
ロキはなんてことない一言が人生を左右することもあるのだということを身を以て体験した。
「楽しみすぎて涙が出そうです」
ロキは諦めて城を出た。次に向かうのは冒険者ギルドである。大量に回収した討伐証明部位を納品しなければいけない。
冒険者ギルドに入り、受付のベリンダさんに報告を行う。
「これが今回の成果です」
いつもより更に大きくなった袋と冒険者プレートを手渡す。
「か、確認してきますのでお待ち下さい」
しばらく待たされてようやく呼ばれた。
「確認に時間がかかり申し訳ありません。数が多い為、報酬の金額だけお伝えします。金貨6枚と銀貨60枚になります」
「あ、はい」
「冒険者プレートをお返しします」
名前:ロキ
スキル:死んだふり
級位:銅
ランキング:48397位(156634位→48397位)
「おぉーランキングが凄く上がった!」
少しテンションが上がったロキは道具屋で油を買って帰宅した。
サラのランプを磨き油を補充し、次の冒険に備えるのだった。
翌日、日課の特訓の為に城に行くと、いつもの訓練場ではなく王都の外に連れ出された。
王都の近くに丘があり、丘の上には石が積まれていた。
「この石積みはヴィクトール騎士団長が一晩かけて作ったんだ!凄いだろう?」
イーリアス師匠は何も凄くないのだが、ドヤ顔だ。
「まずは、この魔法の腕輪を装備するんだ」
「これはゴブリンダンジョンで拾った……?」
「そうだ、鑑定結果は【疾風の腕輪】だ。装備者の素早さが上がる」
「凄い!……装備しました!」
「よし、丘の上から石を落とすから全部スキルで弾け!はい、開始!」
急いで丘の下の位置に着くと、次々と石が落とされる。
「こ、これは思ったより大変だ!」
石は次から次へと落ちてくる為、野球の千本ノックのような様相を呈している。
丘の上の石が無くなると、次は川に移動した。
王都の外には大きな川が流れており、川の上流に行くと大きな滝がある。
滝にたどり着くとイーリアス師匠は開口一番こう言った。
「今から、
「滝打行ですか?」
「滝に打たれる修行のことだ。滝の上からは様々な障害物が流れてくる。全てスキルで防げ」
「えええ!?失敗したら?」
「死ぬ」
一瞬、死の恐怖に襲われたが、覚悟を決める。
「……やります。どんな修行でもやるって言ったのは僕ですから」
パンツ一丁になって、滝の中に立つ。
「まずは石だ。多少怪我はするかもしれないが、死ぬことはない」
師匠が滝の上から拳大の石を落とす。
「イタ!イテテテ!師匠!めちゃくちゃ痛いです!」
「バカヤロウ!当たった瞬間にスキルで弾けばかすり傷で済む!もっと集中しろ!」
集中力を高めて、落ちてくる石が身体に当たった瞬間、部分的に【死んだふり】を行う。
でも、やっぱりタイミングがズレて痛い。
今までは目視してからスキルを使っていたが、滝打行では目を開けていられない為、視覚以外の感覚をフル活用して落ちてくる物を防ぐしかない。
「石が無くなった!次は丸太だ!」
それから3時間、様々な物が落ちてくる滝で修行を続けた。死ぬかと思った。
午後からは自由時間となったが、体力も気力もほぼゼロになってしまい、帰宅してベッドに倒れ込むと気絶してしまった。
イーリアス師匠の特別な修行を続けること2ヶ月、やっと身体も順応し、午後はゴブリンダンジョンで狩りが出来るようになった。
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