004 最強への誓い

「ここが王都かぁ」


 大きな門を通る。


 ヴィクトール騎士団長に守られながら王様と一緒に王都まで来た。


 さすがに王様はノーチェックで入れるようだ。


 道中、王様は冒険者の素晴らしさをロキに熱く語った。


「俺は今でも冒険者1位なんだぞ。国王なんかにされちまったけどな」


「冒険者はいいぞ〜稼げるし何より自由だ!」


「そうだ。今度、建国記念日に面白い発表をするから城に来い。迎えの者を出してやるからよ」


 一気にまくし立てられて返事が上手く言えなかった。


「わ、分かりました」


 王都はとても賑やかだった。


 本来王様はとても忙しいらしく、家を用意するまで宿で待機してくれと言い残し、王様は城へ連行されていった。


 王都でオススメの宿屋だと案内されたのは見るからに高級な宿だった。


「赤龍亭へようこそ。ここは国王イーリアスが冒険者時代に愛用した宿です。国王からお話は聞いております。部屋へどうぞ」


 部屋も広く清潔で、高級そうな調度品が置いてあった。


 だが、ロキにはやるべき事があった。それは冒険者ギルドのチェックだ。


 イーストコースト村では夢破れたが、王都であれば期待できると考えたのだ。


 あと、国王の話に感化されたということもある。


「僕ちょっと冒険者ギルドに行ってくる!」


 王都はとても広いので、宿で冒険者ギルドの位置を教えてもらってから向かった。



 冒険者ギルドに入ると、新米から熟練者まで大勢の冒険者で賑わっていた。


 併設された酒場では酒を飲んでいる冒険者達も居た。


 これだ!これこそ冒険者だよ!


 イメージ通りの光景を見てテンションが上がる。


 依頼掲示板を見ると、やりたかった依頼を見つけた。


【ゴブリン退治】

 王都に周辺に現れるゴブリンを討伐してほしい。

 達成条件:討伐証明部位の提出

 報酬:1匹につき30銅貨


 すぐに受付に行った。


「すみません、ゴブリン退治の依頼を受けたいです!」


「承知しました。でも、常時依頼なので討伐証明部位さえ持って来て頂ければ依頼達成になりますよ」


「そうなんですか、ありがとうございます!ゴブリンの居る場所ってどの辺りですか?」


「王都の周辺であれば大体居ますが、最近は北の森付近に多いようです」


 ゴブリンの現れる大まかな場所を聞いて北に向かう。


 森の周辺に2匹のゴブリンを見つけた。


 武器はその辺に落ちていた木の棒である。


 対してゴブリンはボロボロだが短剣を装備している。


 ロキはゴブリンを完全に舐めていた。


 余裕で倒せる相手だと思っていた。


「うおおおおお!」


 ロキは木の棒を振り上げ、正面から2匹のゴブリンに挑んだ。


 脳裏には、ゴブリンに片足を乗せ勝利のポーズを取る自分が浮かんでいる。


 木の棒を振り下ろす。


 ガンッ!


 木の棒は弾かれ、どこかに飛んでいった。


「え!?うわっ!」


 2匹目のゴブリンが短剣で斬りかかってきた。


 ロキは間一髪避けたが、服が切られた。


「グギャギャ!」


「グギャ!」


 2匹は一斉に攻撃してくる。


「ヤバっ!死んだふり!」


 慌てて10秒後に復活をセットして【死んだふり】を使用した。


 次に意識を取り戻すと、身体は横たわっており、上を見るとゴブリン2匹が短剣を振り上げている。


「まだじゃん!死んだふり!」


 次は、30分後にセットして【死んだふり】を使用した。


 目を覚ますと、もうゴブリンは居なくなっていた。諦めて帰ったようだ。


【死んだふり】状態であればゴブリンの攻撃は無効化出来る事が分かったが、2度と試したくないと思った。


 自分の弱さに落ち込みながら、王都の宿に戻る。


 ロキはその晩、涙で枕を濡らした。



 3日後、国王の使いがやってきた。


「ロキ様、本日は建国記念日で国王から大事な発表があります。一緒に来て下さい」


「分かりました」


 用意された馬車に乗り込んで、城に向かう。


 城の周りには既に多くの民衆が集まっているようだった。


 その脇を通り過ぎ、馬車は城の中へと入っていった。


 馬車を降り、国王の使いについていく。いくつかの階段を登り、とある部屋の前で立ち止まった。


「陛下、ロキ様を連れて参りました」


「うむ、入れ」


 扉を開けて中に入ると国王が待っていた。


「よく来たな、ロキ」


「陛下、僕なんかを呼んでどうしたんですか?」


「陛下はよせ、イーリアスさんでいい」


「イーリアスさん」


「それでいい。ロキを呼んだのはな、特等席で発表を聞かせてやろうと思って呼んだんだ」


「発表ですか?」


「今から始まるから、そこで聞いておけ」


「分かりました」


 シンバルとラッパの音が鳴り響き、国王の前のカーテンが開いた。


 そこはバルコニーのようになっており、眼下には民衆が集まる広場が見える。


「国民よ!今日は建国記念日である!」


 国王が演説を始める。


「建国記念日を祝して、これより3日間、祝賀行事を行う!」


 民衆から歓声が上がる。


「また、今回は特別な発表がある!心して聞け!」


 歓声を上げていた民衆は静まり返る。


「本日より、最高級位であるオリハルコン級の冒険者ランキング1位になった者には我が国において最大の自由と名誉と富を与えることを俺イーリアス・フティアがここに約束する!!」


 現在、オリハルコン級冒険者ランキング1位はイーリアス・フティアである。


 イーリアス・フティアを超える冒険者が現れた時に自由と名誉と富を与えるということらしい。


「では、建国記念日を楽しんでくれ!」


 演説を聞いていた民衆は先程よりも大きな歓声を上げたのだった。


 演説を終えて戻ってきたイーリアスさんはロキに親指を立てて言った。


「聞いていたか?俺はお前に期待してるんだ。きっと俺を超えられるってな。だから、冒険者ランキングを駆け上がってこい!」


 ゴブリンに負けて絶望の底に居たロキの目に小さな炎が宿った。


「こんな僕でも出来るでしょうか?」


「ああ、出来る!人は目標を定めたら走りだすことが出来るんだ」


 その瞬間、ロキは目標を定めた。決して揺るがない目標を。


「分かりました!オリハルコン級のランキング1位になります!絶対に!」


「現ランキング1位の俺を前にしてなかなか言うじゃねぇか。気に入った!明日から特訓してやる。朝6時に城に来い」


「え!?イーリアスさんが俺に特訓を?」


「そうだ。不満か?」


「とんでもない!よろしくお願いします!イーリアス師匠!」


 ロキは国王から特訓を受けられることになった。

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