第29話 ケリュネイアの雌鹿 16
カグヤから、可視化されるほど膨大な魔力が溢れ出し、真っ赤な焔のようにカグヤの身体を包み込んでいた。
「あいたたっ・・・。
くそガキどもめ。
しかし、そうか・・・。その真っ赤な魔力、その膨大な魔力は、朱雀だな。
人の中にできるとは聞いたことがないが、朱雀は、お前の中に封印されていたのか」
ソモは両腕を交差させるように天にかざすと辺りがくすんだ緑青色の光に囲まれる。
「結界?」
「どうやら、閉じ込められたようっスね」
緑青色の結界の壁を叩きながら、ジュンとチヨが呻く。
「ますます、貴様らを、ここから無事に帰すことはできなくなったからな」
「・・・・ファイヤーボール」
カグヤは、ソモに向けて火炎弾を放つ。
しかし、火炎弾は、ソモから大きく逸れ、緑青色の結界を突き破ると砦の建物に着弾し、その建物を崩壊させる。
「・・・・ファイヤーボール」
再び、火炎弾を放つカグヤ。
しかし、今回も、火炎弾はソモから大きく逸れ、結界を突き破り、別の建物を崩壊させる。
「威力は、大したものだが、魔力の制御が全然できていないようだな」
「・・・・ファイヤーボール」
しかし、また、火炎弾は、ソモから大きく外れる。
「当たらなければどうということはない」
ソモは、防御結界を展開しながら、カグヤとの距離を詰める。
「ならば・・・・。
ならば、全て灰燼に帰すまで」
カグヤから漏れ出す魔力の質が変わり、カグヤを中心にらせん状に回転を始める。
「黄昏よりも昏きもの」
カグヤを取り巻くらせん状の魔力は、カグヤを中心とする竜巻に成長していく。
「血の流れより紅きもの」
詠唱を始めたカグヤに向かい、ソモは、風刃を放つ。
しかし、風刃は、竜巻状の魔力の壁に阻まれ、カグヤに届かない。
「我等が前に立ち塞がりし」
ソモは、剣を抜き、カグヤに切りかかる。
しかし、ジュンが盾で、その斬撃を受け止め、カグヤに攻撃が通ることを許さない。
「すべての愚かなるものに」
次に、ソモは、剣の刃に風の魔力を上乗せした斬撃をもってカグヤを狙う。
しかし、今度も、チヨが水の防御壁を出現させ、その攻撃を退ける。
「我と汝が力もて」
カグヤの中で高まっていく魔力の量にソモは、恐怖を覚え、その場から退避するために結界を解く。
結界が解かれたことで、結界内に溜まっていたカグヤの魔力が波紋が奔流するが如く砦内に伝搬する。
その尋常ならざる魔力の奔流を感じとった鹿やカモシカ達は、一斉に砦外に避難を始める。
「等しく滅びを与えんことを!」
ソモは、カグヤに背を向け全速力でその場から逃走を始める。
「穿て!
エクスプロージョン!!!」
カグヤから放たれた眩いばかりの光弾は、ソモの近くに着弾し、あたり一帯を破壊の渦に巻き込み始める。
「カグヤ?」
光弾を放ったカグヤは、力を使い果たし、その場にばたりと倒れこんでしまった。
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