第24話 ケリュネイアの雌鹿 11

”ド、ドドッ!!!”


 突然、大きな破壊音がして、頭上の結界が完全に消滅した。

 結界を構築する触媒装置や維持機構がケリュネイアの雌鹿たちに破壊されたのだろう。


 すると結界が消失するのを待っていたかのように、数十頭の鹿やカモシカ達が、至る所から砦の防壁を飛び越えて砦の中に突入してきた。


 砦の中では、鹿、カモシカ達と砦兵たちの乱戦が繰り広げられる。


「とにかく、この混乱に乗じて、なんとか杖を見つけて手に入れましょう」


「そうっスね」


「でも、どこを探そうか?」


「まず、昨日襲ってきたあの二人を探そう。

 あの二人のどちらかが持っている可能性が高いと思うの」


「わかった」

「了解っス」


「で、一旦別れて探そう。

 きっとそのほうが三人一緒よりは、効率がいい」


「そうね」


「でも、自分は、その杖がどんな杖か知らないっスよ」


「じゃあ、カグヤとチヨはペアで」


「でも、あの二人を見つけたらどうする?」


「なにか合図が送れればいいんだけど」


「じゃあ、これを使おう」


 カグヤは、包から掌に収まるくらいの大きさの三角錐の形をした容器を二個取り出す。


 三角錐の頂点からは、三角錐の高さと同じくらいの細い紐が取り付けられていた。


「これは、『クラッカー』っていう道具で、この三角錐の底の平らな部分を空に向けて、この紐を引っ張ると光弾が発射されるの」


「でも、そんなの打ち上げたら、目立っちゃわないっスかね?」


「これだけ場が荒れていたら大丈夫じゃないかな~?」


「ま、とりあえず、それで行きましょう」


ジュンは、立ち上がると三角錐の容器を一つ取る。


「じゃあ、私は、あっちの方を探ってくる」


「わかった」

「健闘を祈るっス」


ジュンが立ち去るのを見届け、カグヤとチヨがゆっくりと立ち上がる。


「さてと・・・・」


「お嬢、自分たちは、どっちに行きましょう?」


「一番高いところ!」


「え?」


「高いところよ、い・ち・ば・ん!」


「高いところっスか?」


「そうよ、一番高いところ。

 ラスボスは、一番高いところにいるって決まってるのよ。

 昔から!」


「昔からって、ホントっスか~?」


「ほら、チヨ。

 あの建物が、一番高いみたいよ。

 さあ、あそこに向かって、進撃開始~!」


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