15.夢のために
「デュラハンが目撃される階層が浅くなってきているからまず間違いない。あれが地上に出てしまえば大変なことになる」
コートランドの表情は硬い。
モンスターは通常であればダンジョンの外に出ようとはしない。
そういう習性がある。
しかし、まれに地上を目指してしまうモンスターもいる。
弱いモンスターなら外に出たところで問題はないが、あのデュラハンは強い。
地上に出るようなことがあれば大惨事になりかねない。
「最悪の場合には私が出るが、それはあくまでも最後の手段だ。ギルドとしてはその前になんとかしたいのだよ」
「それで俺たちに依頼を……」
俺が言うとコートランドはうなずいた。
「中途半端な戦力を投入しても被害が増えるだけだ。それに騒ぎが大きくなればデュラハンに挑もうとする冒険者が出かねない。だから少数精鋭。一撃で終わらせたい」
確かにそうだ。
話が広まったらデュラハンを倒して名を上げようとする冒険者も出るだろう。
そうなればギルドでも手に負えない混乱状態になってしまう。
「君たち二人はうってつけなんだよ。ランクが低いできたばかりのパーティだから動いても目立たない。それでいて、どちらも強力なスキルの持ち主ときている」
「私も、ですか?」
シアは少し戸惑っているようだった。
「そうだよ、エリンシア君。うまく折り合える相手がなかなか見つからなかったようだが、君の実力は把握している。こう見えて、彼女はとても優秀なんだ」
コートランドが受付係を見やる。
「こう見えては余計です」
受付係は淡々と指摘した。
無表情のままだが、怒ってはいるらしい。
「すまない。許してくれ」
「わかりました。許します」
詫びるコートランドに受付係が無表情で言う。
なんだか独特なやりとりだな。この二人、いつもこうなんだろうか。
「でも、ギルドもシアのことは知っていたんですね」
俺が言うと受付係さんはこくりとうなずいた。
「はい。並外れた資質の持ち主ですので」
「やっぱり見てる人はちゃんと見てるんですね」
苦労していたシアだが、こうしてちゃんと評価してくれている人もいたのだ。
なんだか俺も嬉しかった。
「あ、ありがとうございます……」
「こういう時は胸を張るんじゃなかったか?」
褒められて小さくなるシアに言ってやった。
「…………グラッドさんのいじわる」
顔を赤くしたシアはそっぽを向いたが、本気で怒っているわけではないようだ。
「君たち二人ともいい相手を見つけたようで何よりだよ」
コートランドが笑いながら言った。
「というわけで、お二人に冒険者ギルドからの依頼です。内容はBランクダンジョン、「サンギュイン・クリプト」に出現したモンスター、デュラハンの討伐。報酬は金貨百枚。ならびに冒険者ランクの二段階アップです」
受付係さんは書面にした依頼書を出してくれた。
破格の報酬だ。俺たちのランクでは考えられない大仕事。
だが、リスクも大きい。
四人がかりでも逃げるのが精一杯だったあのデュラハンを二人で倒さなければならないのだ。
「引き受けてくれるかい?」
コートランドに聞かれた。
俺たちの答えは決まっている。
「はい!」
「もちろんです!」
二人揃ってそう答えた。
危険は大きい。
でもチャンスはそれ以上に大きい。
なら、やるしかない。
俺たちの夢のために。
「結構。では、君たちの力を見せてもらおう」
ギルドマスターは試すように俺たちを見ていた。
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