告白大行列!⑪

 急に赤子を差し出され、思わず受けとったものの戸惑う私。

 その腕の中の子はというと。



「うぁ〜? 」



 急な振動に目が覚めたのか、しぱしぱと瞬きをした後、キョトンとこちらを見上げてくる。

 その目は落ち着いた赤色、そう夕暮れのようなそれは……。



「あなたの瞳は茜色ね」


「あかねいろ?」



 キョトンとこちらを見つめてくる儚げ美人。

 今気がついたけれど、この子と瞳の色がそっくり。



「ええそう。夕焼け色の事をね、茜色って言うのよ。この子の瞳は夕焼け色の、茜色。そう思わない?」


「ゆうやけいろ…あかねいろ…」


「貴女の瞳の色とそっくりね、綺麗な色だわ」



 儚げ美人の目を見て伝えると、いきなりブワッと泣き出した。

 え、ちょっと待って何事。こんな儚げ美人泣かせるとか罪悪感で死にそうなんですけど。

 すみません、黒豚ごときが調子乗りましたァ!

 表面上はほほ笑みを浮かべながら、内心死にそうになっていると。



「あ”り”がどう”ござい”ま”ずぅ……」



 ズビズビと、顔に似合わず豪快な泣き方をする儚げ美人。

 だが全くもって何に感謝されているのか分からない。

 一先ず彼女が落ち着くのを待っていると。



「こんな、こんな女神様みたいな綺麗な人から、綺麗だなんて言ってもらえるなんてぇ……私、私決めました。この子の名前はアカネにします! この子の名前を呼ぶ度に、綺麗だって言ってもらえた幸せな気分になりますし、この子の事がもっと好きになる」


「貴女みたいなお母さんに愛されるんだもの、この子はきっと幸せになれるわ」



 そう言って微笑む私に、何故か儚げ美人だけでなくその場に居た全ての人が私を拝んでいた。

 ……何故に?




 その謎は、案外すぐに解けた。

 皆が退出したと同時に、レオンが痛いくらいに私を抱き締めてきた。



「ちょ、レオン。嬉しいけれど少し力を緩めて? 少し苦しいわ 」


「ご、ごめんツェリ! 」



 ワタワタと抱き締める腕を離したレオンに、今度は私から抱き着く。



「抱き締めることは大歓迎よ? でも、いつもと様子が違っていたから心配になって……どうしたの? レオン」


「ツェリが、遠くに行ってしまうような気がして」


「変なレオンね。私はどこにも行かないわ? どうしてそう思ったの? 」



 レオンの頬を撫で優しく促すと、レオンはポソポソと話し始めた。

 まぁ、話をまとめるとこうだ。

 柔らかな日差しの中、赤子を抱いて微笑む私が天使のようで、自分の手の届かない所に行ってしまうのではないかと不安になってしまったらしい。

 かわいいかよ。私が天使うんちゃら〜というのはまぁ置いといて。置いてきぼりにされそうだからぎゅうぎゅう抱き着くって、え、可愛いの極みじゃないですか?



「大丈夫よレオン、貴方を置いてどこにもいかないわ。私とレオンはずーっと一緒なんだから」



 ぽんぽんと背中を優しく叩きながら、宥めるようにレオンに告げる。

 一歩間違えばただの重い女なこの発言も、あら不思議!相思相愛マジックにかかればご覧の通り。



「ずっと?」


「ええ、死ぬまで一緒よ」


「ダメだ」


「え? 」


「忘れたのか? 以前に伝えただろう。僕はツェリの事、死んでも離さないから」


「忘れてないわ。ただ、レオンの口からもう一度その言葉が欲しかっただけ」


「何度でも言うよ、ツェリ……僕のすべて。愛してる」



 どろりとした執着にも似た愛情で捕らえて、囚われて。

 お互い雁字搦めになりながらも、私達は幸せなのだ。

 愛情を確認するように重ねたキスに、私達は酔いしれた。



 1週間にも渡る大行列は結果的に、私のレオンに対する溢れんばかりの愛情を国民に知らしめる結果となった。

 そして、一部の熱狂的な人々から【レオンと私が2人で1つの尊い存在】だということが広まり、少しづつ浸透していくのであった。



 私としては、レオンの魅力を存分に語れるこの機会、年に一度くらい開催しても良かったのだが、レオン曰く『皆の前でツェリに愛を伝えられるのは恥ずかしいし、それは2人きりの時に存分に頼む』との事だったので、2人だけの空間で存分にレオンの素晴らしさを語り、レオンを赤面させ、たまに反撃にあって私が赤面していることだけは記述しておこう。

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