告白大行列!⑩
後の時代において有名な逸話の1つとなってしまう、この【レオンの素晴らしさを語る会(私命名)】。
勿論私はそんな事は露知らず、1週間という長いようで短い、このお祭りのような日々が終わる事を、少し寂しく思っていた。
「今日で最後なのね……」
寂しそうに私が零せば。
「最後である事が嬉しいような、寂しいような気分だな」
レオンが苦笑気味に答える。
「あら、レオンはこの行列が終わるのを心待ちにしていたのかと思っていたわ。いつも終わる頃にはぐったりとしているから」
「うぐっ……。いや、そ、それは! ……ツェリの気持ちを聞けるのは嬉しい、嬉しいのだが、心臓がもたないのだ。だが、それも今日で最後なのだと思うと寂しくなってな……」
「まぁ! レオンが望むのなら、いつでも愛を伝える準備は万端ですわ!」
「お、お手柔らかに頼む……」
照れ屋なレオンが顔を真っ赤にした所で、入室の伺いを立てるノックの音が響く。
入ってきたのは、赤子や幼児を連れた夫婦らしき5組。
お世辞にも綺麗な服装とは言えないが、継ぎ接ぎだらけの服でも精一杯の一張羅なのだろう事はうかがえる。
その顔は皆、ハッと息を飲むほどの美形。つまり、この世界では……。
「醜い顔をお見せして、悪いと思ってます」
代表者なのか、一人の男性が話し出す。
「お…私たちは、見ての通りの醜さで。言葉遣いもなってねぇですし、そんなんじゃまともな職業にもありつけねぇです。ここにいる奴らで、肩を寄せあって縮こまりながら生きてきた。なるべく人目に付かねぇように、小さくなって。それが、私たちが醜く生まれた上での運命なんだって」
思わず、それは違う!と口を挟みそうになった。
だが、容姿にも身分にも恵まれた私が言ったところで、何の説得力もないだろう。拳をギュッと握った。
「だけど、私にも子ができた。私とかみさんそっくりの、醜くて……可愛い子が。この子には幸せになってもらいてぇんです」
その男性は、決意を滲ませた目でレオンを見ると。
「本来だと、レオナード国王陛下とシュタイン侯爵令嬢の婚約を祝福するとこだってぇのは分かってます。でも、こんな機会でもねぇと、直接お願いすることも出来やしねぇです。お願いです、陛下。俺は罰せられてもいい。だから、どうか俺たちの子が少しでも幸せになれるような国をつくってくだせぇ」
涙ながらに土下座する男性。
それに対し不敬だ、と近衛兵達が動こうとするのを手で制したレオンは。
「最後まで諦めず、努力し続ける事を約束しよう」
揺るぎない声で言い切った。
「いいか。私はこの国の美醜への認識を壊していくつもりだ。醜いからといって能力には何の関係もないとな。それを、私自らが証明してみせる。だから、お前たちも諦めるな。醜いからとやる前から全てを諦めるな」
それは【誰よりも醜いレオン】が言うからこその説得力ある言葉。
男性達にも伝わったのだろう、ボロボロと涙を流していた。
私はそんなレオンが誇らしくて、すぐ側にあった腕に自分の腕を絡めた。
レオンは平然としていたが、その耳だけが真っ赤になっていて、そんなところも愛おしかった。
「あっ、あの! シュタイン侯爵令嬢様! 」
退出の時間になった時。
腕に赤子を抱えた儚げ美人さんから声をかけられた。
「何でしょうか?」
私の問いに、彼女はギュッと目を瞑ると。
「この子に名前をつけてください! 」
と、腕の中の子を差し出した。
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