告白大行列!⑨

【イケメン5人衆】と呼ばれているらしい、5人の男性に告白されたのを最後に、愛の告白らしきものは目に見えて減った。


 その代わりに増えたのが、私の事を、その、非常に言いにくいのだが……まるでアイドルのように崇め讃える人々。



「シュタイン公爵令嬢、貴女は私たちの希望です! 」


「我らを輝かしてくれる太陽! 」


「その存在はまさに女神! 」



 先程から、これでもか!というほど褒めてもらっているのだが、私は妙に落ち着かない。


 何故なら、その褒め讃えてくれている人々が、前世的美形な人々ばかりだから!

 自分の姿に嫌悪感が無くなったが、それはそれ、これはこれ。

 前世的美形の方々に自分の容姿を褒められる……何といたたまれないこと!


 いや、分かっているのよ?

 彼らは今世の感覚では不細工で、これまた今世の感覚で美人な私を褒めてるだけってことは。それは至極真っ当な感覚。

 でもなんか恐れ多いというか、恥ずかしい!


 そして、このいたたまれなさに拍車をかけているのが、隣に座るレオンの存在。

 その通りだ、と言わんばかりにウンウンと深くうなずいている。

 そのレオンの反応に調子を良くして、彼らの私への賛美は止まらない。


 止めて!?

 私のライフはもうゼロよ!?


 表面は穏やかに微笑みながら、内心何回か恥ずか死んだ私は、隣に座るレオンへの反撃を開始することにする。

 八つ当たりだって?そうですが何か!



「まぁ、皆様。そんなに褒めていただけるなんて有難いですわ。でもね、皆様。ここに御座すレオンこそ、尊い存在なのですわ」



 きょとん、とした顔をする目の前の人々。

 私は理解しきれないといった顔をするその人々に、ここぞとばかりにまくし立てる。



「いいですこと? 国を治める一国の王でありながら、その心はピュア! 時に冷酷な判断を下しながらも、私が手をギュッと握るだけで……ほら! こんなに真っ赤に! 皆さま、よくお聞きになって? これが、これこそが【ギャップ萌え】というものですわ! 」



 私たちの前に座る人々は『ギャップ萌え……』と小さく呟きながら、パラパラとまばらではあるもののそれぞれに拍手をする。

 その反応に気を良くした私は、勢いのままに続ける。



「ええ、そうです。ここに御座すレオン、そしてそれを崇め称える私。皆様も、レオンの素晴らしさをお分かりになったのなら、今日からは私と志を同じくする【同志】ですわ! 一緒にレオンの統治を盛り上げていきませんこと? 」



 私が【同志】という言葉を口にした途端、目の前の美形な方々が、発光したかのような笑みを零す。

 いや待って、眩しい。レオンで光耐性着いたと思ってたけど、これは数の暴力!

 眩しさに思わず隣のレオンを見るが、レオンはレオンで照れたはにかんだ笑顔を見せていて……グハッ! これはピュアが過ぎる。え、貴方はやはり天使?(錯乱)



「ありがとうございます! シュタイン侯爵令嬢!」


「今までこの事に気が付かなかったことが悔やまれるほどです! 」


「私達は、ようやく悟りました! 」


「「「「「シュタイン侯爵令嬢とレオナード国王陛下は2人で1つの尊き存在なのだということに! 」」」」」



 力強くキラキラとした目をしながら、そう宣言する美形達。

 そして彼らは軽やかな足取りで退出していくのであった。




 この時、この国において初めて【カプ推し】という概念が産まれたと言われているが、真相は定かではない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る