番外編 告白大行列!⑧ side レオナード

 ツェリと僕の婚約に不満がある民を、直接会えるように手配したのは僕だ。

 ……僕なのだが、今の状況はやはり面白くない。



「「「「「ツェツィーリエ様!初めて見た時から好きでした! 」」」」」



 僕たちの前で横一列に跪き、ツェリに愛を謳う美しい5人の男たち。正直なところ、不敬罪で罰してやろうかとも思う。

 だが、今回の事では罪に問わないと約束したのもまた僕だ。実際、彼らは危害を加えるような真似はしていない……いや、僕の心に影を落とすという罪を犯しているな。



「まぁ、ありがとうございます」



 僕の不穏な思考を晴らすかのように、涼やかなツェリの声が響く。



「貴方たちの気持ちは嬉しく思います。ですが、貴方たちが私の事を想ってくれるのと同じくらい、私はレオンの事を想っているのです。私の事を想ってくれるのならば、この婚約を祝福していただけると嬉しいわ」



 言い終わると同時に私の方を向き、ニッコリと微笑んでみせるツェリ。その笑顔に思わず見惚れる僕。いや待てよ、僕だけじゃない。

 先程ツェリに告白をした5人以外に、待機している近衛騎士たちまでもが見惚れている。ルードとリーフが表情を変えず、いつも通りなのは流石といったところか。

【美しさ】を武器にその場を掌握したツェリは、無自覚なようだが。



「ツェツィーリエ様は今、幸せ、ですか?」


「ええ、とっても」



 5人のうちの1人がポツリと漏らした問いかけに、ツェリは満面の笑みでもって答える。

 男たちはその笑顔を見て、ため息をつくのと同時に顔を見合わせると。



「「「「「大変申し訳ありませんでした」」」」」



 頭を下げた。



「俺たち、ツェツィーリエ様に好意を持ってはいますけど、貴女にそんな幸せそうな笑顔をさせる自信はありません」


「正直、俺たち見た目は良いと周りから散々言われてきてたんで、告白したらあわよくば……みたいに思ってました」


「でも、ツェツィーリエ様顔色一つ変えないんですもん」


「あぁこれは無理だー、ってもう心に刻まれたというか」


「あ、俺たち城下では【イケメン5人衆】なんて言われて結構有名なんで、俺たちが玉砕したってなったら、もうこの先ツェツィーリエ様に告白する輩もだいぶ減るとおもいますよ、レオナード陛下」


「「「「「シュタイン公爵令嬢とレオナード陛下のご婚約、心よりお祝い申し上げます」」」」」



 5人の男たちは、口々に好き勝手なことを話すと、最後に綺麗な礼をとり、僕たちの婚約を祝福し、退出した。




 あの男たちの言う通り、その後ツェリに告白する男はいなかった。

 ただ、なんというか……上手く説明はできないのだが、ツェリの事を崇拝するような目をした男たちが、ツェリに微笑まれては涙を流しうち震える……といった、不思議な光景が続くのだった。

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