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閑話 僕の家族 side ヨシュア
女神様はやっぱり存在するのだと、その人を見た瞬間感じた。
その日、一緒に父さんの勤務先である王城に向かうのだと、嬉しそうな母さんに言われた。何でも、父さんが弁当を忘れてしまったらしい。弁当を届けにわざわざ出掛けなければならないというのに、嬉しそうな母さんの様子は明らかにおかしく、僕は何か隠し事をされていると察した。
だが、父さんの勤め先を見られるのは都合がいい。人の良い父さんのこと、騙されていないかキチンと見極めなくては。
僕の家族には両親と僕、そして見たことがない姉さんがいるらしい。両親の言う事には、美し過ぎる余り、公爵様の所に養子に出されたのだという姉さん。だが僕は、正直その話を疑っている。
僕は父さんも母さんも、その2人に似ている僕自身の容姿を嫌いではないが、世間的には好まれない容姿であることを知っている。嫌いでないのは、あくまで大好きな両親の容姿であるのと、僕自身10年過ごしてきたこの容姿にそれなりに愛着があるからだ。最も、リスクなしに美形になれるのなら、迷いなくお願いするくらいの愛着だけど。
そんな両親から産まれた姉さんが、そこまでの美貌を持っているはずがない。きっと人の良い父さんと、しっかりしているようでいて、意外と抜けている母さんが、上手いこと言われて騙されてしまったのだろうと、僕は本気で思っていた。実際に姉さんに会うまでは。
母さんと共に父さんのいるという訓練場に着くと、僕ですら驚くほどの不細工な男の人と話している父さんを見つけた。そして、僕たちに気が付いた父さんが、コチラに向かって来る。
そして、僕は女神を見た。
余りの美しさに驚いてボーッとしていると、母さんが隣で泣き崩れていた。その様子にもビックリしてその場に立ち尽くしていると、前から3人がやって来た。
「まま、ヨシュア……」
その声を聞いて、気が付いた。
「あ、ヨシュアは覚えていないわね、きっと。私は「もしかして、僕の姉さんですか?」
言葉を遮るのは良くないと思いながら、僕は正式に名乗られる前に、彼女の存在を言い当てたかった。黒色の瞳の色が、見開かれた目から覗く。
「ヨシュア、お前、覚えて?」
「姿は覚えていません。でも、たまに夢で聞く声に似ていたから。『ヨシュア、沢山食べて寝て、大きくなるのよ』って言う優しい声に」
父さんの驚いた声に、そう返す。ずっと誰の声だろうと疑問に思っていた。身の回りの誰の声でもないそれを、僕は女神様の声だと信じていたけど、姉さんの声だったとは。
「そう、そうだったのね……覚えていてくれてありがとう、ヨシュア。また会えて嬉しいわ」
ボロボロと大粒の涙を流す姉さん。狼狽えてオロオロとしていると、隣にいた母さんが立ち上がって姉さんを抱き締めていた。
「ツェツィ、貴女も大きくなったわね、そして凄く綺麗になったわ……」
そして僕たち家族は、感動の再会を果たした。
余談だが、驚くほどの不細工な男の人の正体がこの国の第一王子殿下であり姉さんの婚約者、しかも相思相愛だというのを聞いて僕は。
姉さんは一見完璧に見えるけど、男性の好みは致命的に悪い、この世に完璧な人間などいないのだな……と失礼なことを思うのであった。
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