第32話 リーフェルト side レオナード

 ツェリの提案で見つけることのできた3人の側近候補。候補、という文字が外れ、正式に側近にできるのは、15歳のデビュタントをむかえた後になる。



 1人目の側近候補、リーフェルト。

 紺色の髪と目を持つ、醜い容貌の持ち主。だがその濃い髪と目の色がプラスになり、まだ見れる不細工、といったところか。


 リーフェルトは、僕と同い年の驚く程頭の良い少年だった。平民で学ぶ機会も少なかったはずなのに、その知識の多様さには目を見張るものがある。

 そんなリーフェルトは、己の知識欲を満たすために僕の側近候補に名乗りを上げたのだという。



 初めてリーフェルトと対面した時。それらしく聞こえる耳障りのいい言葉を選び、側近候補になりたいのだという彼に。


「本当にそれがお前の本心か?」


「え?」


「それがお前の本心なのだとしたら、実につまらん事だな。そんな人間を、私の側近候補にする事はできん。退出していいぞ」


「……あ、あの!」


「なんだ」


「わ、私は、自らの欲の為にレオナード殿下の側近候補に名乗りを挙げました。大変申し訳ありません!」


「欲、とは?」


「知識が、欲しくて。学ぶことが、新しい知識を得ることが、たまらなく楽しいのです。ですが、平民という身分では、学ぶことは中々難しく……。側近候補になれば、その願いも叶うのではないかと、愚かにも思いました。レオナード殿下を利用するような真似をしたこと、謝罪申し上げます。どのような罰でも受ける覚悟です。ただ、万が一お許しいただけるのであれば、私はこの身を賭してお仕えする所存です」


「気に入った」


「……え」


 僕の傍が一番、己の知識欲を満たすのに都合がいい事を知っているリーフェルトは、僕の興味が薄れると悟った瞬間、本心を打ち明けて僕の興味を引く作戦に切り替えたのだろう。

 不敬ともとれるその本心は、失敗すれば命すら失う危険な賭けだった。下手な誤魔化しや嘘は僕に見破られると勘づくその察しの良さや、命を救う対価として忠誠心を見せるその計算高いところも実にいい。


「お前の事が気に入ったと言ったのだ、リーフェルト。そこまでの知識欲を持つならば、私と一緒に【聖ステラ学園】に入学してみるか?」


「よろしいのですか!?」


「構わん。ただし、入学するにあたって一つ条件をつけよう」


「なんでしょうか!」


「18歳までに高等部卒業を目指すこと。やれるか?」


「やります!やらせて下さい!」


 学園の名前を出した途端、目を輝かせて前のめりになるリーフェルトにおかしくなってクツクツ笑う。

 そして、私の初めての側近候補は、リーフェルトとなった。

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