第6話 悪食

「あくじき?」


 耳慣れない言葉に、私がそう聞き返すと。


「そう。子豚ちゃんのパパとママと弟くんは、世間一般からすると、好感を持たれ辛い外見をしている。けど、子豚ちゃんにとっては好ましい外見だろ?」


 フィリップス様はよく分かっている。ウンウンと激しく頷いて同意すると。


「そういう、一般的に人が嫌な外見の人が好ましく思える人のことを、悪食という」


 まぁ、俗語だな…と付け加えたフィリップス様。なるほど、理解した。

 両親は、未だ真っ白のまま…だと思ったら、急に泣き出した。


「ぱぱ!?まま!?」


 びっくりして大声を出してしまう。


 2人は嗚咽をもらしながら、私たちのせいでツェツィの嗜好を歪めてしまった、ツェツィはこんなに美人なんだから、素敵な人と結婚も望めたのに…と後悔し切りだ。


 正直なところ、この嗜好は前世から引き継いだものなので、両親のせいでは決してない。この世界が前世と美醜が逆転しているのなら、言い訳する理由があってむしろ助かった!


 そんなゲスなことを考えながらも、両親に問いかける。


「ぱぱは、ままとけっこんできてしあわせ?」


「勿論」


 いきなりの質問に、意図が分からなかったのか怪訝な顔をしつつも、即答する父。


「ままは?」


「とても幸せよ」


 2人の答えに私は満面の笑みを浮かべて。


「だったら、ツィーもきっとだいじょうぶね!」


「え?」


「ぱぱもままも、みにくいひととけっこんしてるのにしあわせなんでしょ?だったら、ツィーもみにくいひととけっこんしてもきっとしあわせ!」


 両親はハッとした顔をして、『ツェツィには適わないなぁ』と微笑んだ。


「ははっ!子豚ちゃんに1本取られたな」


 フィリップス様がそう言って笑った。

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