第9話「運命の出会い」

4人が任務に出掛け、各々帰宅すると暁月以外は仮眠を取り、皆が起きる時間帯に目覚めました。



「え?巧未さんを見たって?」

朝食後の一服中、げっそりしたアウロラが驚いて夜冬に聞きました。

「そうなんだよー。あの色にヘルメット、だからまさかとは思ったけど、名前叫んで俺の身の証明もしたら、手で挨拶を返された」

「なるほどな…でも同じような見た目だったって場合は?」

「ないない!敵視点でも俺達視点でも欺かれた《デコイ》だぞ?確実にあの人しか居ないじゃん」

「ふーむ……」

アウロラはやはり信じられないように疑っていました。

何せは茨羽巧未という人は他世界で隠居中で、戦っていない筈だからです。

「でも、あの人は《極罪》だし…まぁ何処へでも行けないことは無いけど…」

「なんだ、誰の話だ」

そこに声を掛けたのは、ルナでした。

その目はギラりと眼光を宿らせ、アウロラを睨んでいました。

「ひッ…ル ルナさん…」

「貴様、私が美雪を部屋に運んで寝かしつけている間に、鍵まで閉めて寝たな。覚悟しろ、まだマシュマロの在庫はある」

「勘弁してよ、ルナさん!ただマシュマロ焼くためだけに俺の魔力と魔術はある訳じゃっ……!?」

ルナの手には突如金属の篭手が装備され、尖った指先と冷ややかな手がアウロラの顔を掴み、アウロラは背筋を凍らせました。

「私から楽しみを盗るなよ、ガキ。それなら私に追加で美味い甘味と菓子を買ってこい、お前の金で。そしたら当分は安泰に過ごせるだろう」

「は"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"~」

ぶわぁっと泣き出したアウロラはフラフラと部屋に戻って、お金を取りに行きました。

「夜"冬"ぉ"…ま"た"後"で"報"告"よ"ろ"し"く"ぅ"~」

「ついでに俺も買ってきてねー」

笑顔で手を振る夜冬にルナは改めて聞きました。

「で、誰の話をしてたんだ」

「えっとね、茨羽巧未さん。ルナさんも知ってるでしょ」

「あぁ、アイツか」




【茨羽巧未】

元ノーネームメンバー、18年前にこの組織を抜けて恋人と結婚し、隠居生活中。

《罪の炎》は《怠惰》で《極罪》まで至ったが故に、今の夜冬に継承された。

黒、赤、金色の独特なヘルメット付きパワードスーツを装備し、技術力と開発力は高く年々進化していた。

コードネームは『オメガ』。

二つ名を『泡沫の幻術師』と言った。



「アイツがお前達の任務先に居たと?」

「そうそう、目的が俺達と同じだった。隠居してるのにまさかと思ったから…」

「《極罪》まで至ってれば、何処へでもいける。暇つぶしにでも行ってたんだろ」

「暇つぶしでチャンピオン狙うかなぁ…?」

「知らん」

「ルナさんも極罪だけど、誰かに継承しないの?」

「する奴が居ないだろう」

「そっかー」

ルナは息を着くと「私は出掛ける、じゃあな」とそのまま立ち去ってしまいました。

「行ってらっしゃい〜」

夜冬も息を着く。

「巧未さんに、極罪かぁ…」




【極罪】

《罪の炎》の終着点。

《罪》、《大罪》、《極罪》と進化があり、その条件は分からないがそれぞれの違いは明らかだった。

《罪》は能力開花、特定の耐性を保有する。

《大罪》は能力強化、罪の耐性を譲渡可能になる。

《極罪》は上記の力を身に宿し酷使でき、罪の炎は継承が可能、特別な能力が覚醒しテレポート等が使用出来るようになる。

《罪》は《罪の炎》を宿した際に該当する7つの大罪の罪の感情があれば、自然と開花する。




───────────────────────


その頃、暁月は集落外周の見張りを終えて、集落内を散策している最中でした。

任務明けで夜通し見張りをし、集落の衛兵より働いて動いていましたが、特に異常もなく朝を迎えました。

お店で商売する人達の朝は早く、もう店を開けられるほどに準備は整っており、衛兵でいう夜勤帰りの暁月に声を掛ける人も少なくありません。

「お?アカツキくんかい。おはよう。」

「おはようございます!質屋のお兄さん」

「はっはっはっ、良い冗談だ。お兄さんとは」

質屋の男はもう50になりますが、見た目はまだまだ30代ほどの若々しい見た目でした。

「あっち方向から来たってことは、見張りしてたのかい?」

「そうです。用事が早く終わって暇だったので、夜間ここの見張りをしてました!」

「元気があって結構な事だ。でもまだまだ子供なんだから夜はしっかり寝ないと」

「そうですね、背も大きくなってあなたを越えないと」

「はははっ、そんなの君ならあっという間に越しそうだ」

質屋の男は鍛冶屋のジェイドに並んで、この集落では背の高く172cmで暁月は167cm、この集落の男性の比較的高身長は160cm程でした。

「…連中達には変に絡まれなかったかい?」

「大丈夫ですよ、彼らはカードゲームしてましたから、僕の事なんて気にしてませんよ」

「はぁ……衛兵の奴ら、立場は住民より高いから、やり放題…。ジェイドに私、同期達は勤務中は遊びだの、あくびだのしたらぶん殴りあってた」

「はははっ!必死に集落の皆を守ってたんだね」

「そうだね、だから今の集落がある」

「じゃあその貴方達が守ってきた集落見回ってきますね」

「いつも助かるよ。衛兵より頼りになる」

暁月は笑顔で手を振り、質屋を後にしました。



暁月はその後朝の集落を歩き回り、朝は学び舎に行く子供達と同い歳達と沢山すれ違って、なんなら学び舎まで一緒に歩いて行っていました。

彼らは昼まで学び舎で知識を蓄えた後、昼は遊び、手伝い、集落に賑やかさをもたらしていました。

そして暁月は昼まで多くの店の人と沢山話をしたり、手伝い、お年寄りの人には肩もみ等をしてあげていました。

それらを終えて、昼過ぎの学び舎に再度向かおうとしていた所でした。

その時、何故か左眼が痛み、目が眩みましたが何事なく歩こうとした時でした。

「お金が無いなら、渡せないわよ!」

大声で怒鳴っているのが耳に入り、声のする方へ歩み寄って行きました。

そこは甘味処でした。

この集落で唯一甘い物を取り扱うが故に人気で裕福な店でした。

甘味処の店主とカウンターテーブルで対面して話しているのは、1人の女の子でした。

その女の子には暁月は微かに見覚えがありました。

「廃棄するものでも、学び舎に提供するものとか再利用するものだってあるんだから、タダで売れないよ!」

扉を開けて、ドアベルが店内に鳴り響くと店主は暁月のほうを見ました。

「あら……アカツキくん。いらっしゃい」

「どうも~!店の外まで怒鳴り声が聞こえたから寄りました」

「ははは…恥ずかしい所を見せたね…。でも、そういうものなんだよ」

店主はキッと目の前にいる女の子を睨みました。

「何があったんですか?」

「この子、『これください』って言ったのにお金持ってないんだよ。『一昨日まではあったのに』なんか言ってとぼけちゃってさ。それにこんな子集落には見た事ないよ」

「ふむむ…」

暁月はその女の子の容姿を見ました。

白金のサラサラとした長い髪に、明らかにこの集落の服装ではない身なり、それは昨日暁月がすれ違った時に思わず振り向いた子に特徴が一致していました。

今その女の子は俯いて顔は見えませんが、暁月はその子の手に何かを握らせると言いました。

「ほら、この子お金持ってるから良いよね?」

その子の手を開いてお金がある事を証明しました。

「……分かったわよ。これと他には?」

女の子はもう片方の手で恐る恐るもう一品指すと、暁月はそれに加えて注文しました。

「じゃあ僕もこれとこれ、あとルナ姉用に3セットにこれも頂戴?」

「はいはい、3色団子に揚げ餅、みたらし団子ね。少々お待ちを」

2個で1セットなので、お得なようでこの集落での甘味がいかに貴重かよくわかる値段でした。

頼んだ物は袋に入れられ、お釣りを貰って2人は店を出ました。


その子はだんまりで、暁月は何処かに座って話そうとし、椅子のある広場に向かい、座りました。

「ごめんなさい」

「ん?」

座って最初に発言した言葉でした。

「わざわざ助けて貰って…それに買ってもらって」

「いいよいいよ、別に。それに怒鳴られてるのに通り過ぎるのも気が引けるから!」

その子は依然として俯いたままでした。

暁月は袋の中から3色団子を一串取り出すと、その子に向けました。

「はい、アーン」

それに何かを感じたのか、その子は徐々に顔を上げて暁月の方を見ました。

綺麗で宙のような青い瞳はその目で暁月をしっかりと捉え、その目は暁月の目と合いました。



その人は綺麗な空のように青い瞳で、笑顔で、私を見ていた。

その目はとても惹かれるような優しい色で性格が現れてるように見えた。

可愛いようでカッコいいと感じる雰囲気と、男の子のはずなのに女の子みたいな長い髪と顔、中性的な見た目をしたその人に私は………

──差し出された3色団子の桃色を咥えた後、彼の手から串を取り、私の手で持った。



「美味しい?」

暁月はその女の子にニコニコと話しかけた。

「ん…おいしい」

女の子も微笑んで、暁月に言葉を返した。

暁月はそのまま話を続けた。

「さっきの話だけど、『一昨日まではあった』って昨日は?昨日は何も買ったりしてないの?」

「昨日は……覚えてない……」

「え?」

女の子はしんみりとした表情で団子を見つめる。

「一昨日までは記憶がちゃんとあるの。何をしてたか、どこへ行ったかとか…でも昨日は曖昧で何も分からない…」

「んんん…?じゃあ今日は何してた?」

「今日は……ん……?」

「思い出せない?」

女の子は深く考え込んでしまい、頭を抱えました。

その間に暁月は3色団子を1口食べて、咀嚼し飲み込むと提案するように発しました。

「何があったか教えてよ、一緒に考えるから!」

「え…う うん」

その女の子はこう述べました。

───────────────────────

・自分の家が部屋がある筈なのに、外で寝ていた

・その家と部屋にはずっと前から別の人が住んでいた

・誰も自分のことを知らなかった

・自分の所有物は一切無くなった

───────────────────────

「うーん……」

暁月は悩みました。

確かに数年この集落を訪れて見回っていますが、この女の子を一度も見た事もなく、噂も聞いたこともありません。

しかし、今この子は何も無く、周りに頼る人が居ないので放置するにしても深刻な問題になります。

歳が近いのは間違いなく、それでも女の子なので暁月は放っておけませんでした。

そこで暁月は1つ思いつきました。

「僕達のお家においでよ!」

「え?」

「大丈夫、説得してみるし、駄目でも宛はあるから!」

「そ そんな…理由もなく、悪いです…」

「でも、ここに君の生きられる場所は無いよ?」

暁月はサラリと残酷な事を口ずさみました。

それには思わず女の子も息を呑みました。

「あっ…ごめん。言い方キツかったね…。僕は長い時間この集落を見て回ったりしてるけど、君を見た事ない。1文無しで雨風凌げる場所もない、それなら僕達の家に来た方が安全で助けられるかなって、それに」

暁月の性格上、見捨てる事はまずしませんでした。

「困ってる人を助けるのに、理由は要らないから」

暁月は団子を置いて、手を差し出しました。

「僕は暁月夜桜。君の名前は?」

女の子も同じようにして、暁月の手を握りました。


「─私はイア。よろしく、暁月くん」


イアという名の女の子は暁月に優しく微笑みました。

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