第17話 城君と鉢合わせ!?

あれから1週間かぁ。城君の初主演のドラマの撮影はあれ以来見に行ってない。

あの場所に行ったところで、挙動不審の怪しい人扱いされるだけだ。

夜中の撮影の様だし。


私は行きつけのカフェで、もうそろそろ午後3時になろうとしている頃にカフェオレを飲んでいた。

今日は平日なのにそこそこに人がいる。みんな一人客が多い。

私はミステリー小説を持ってきていたので、2時間はこのカフェで時間を潰そうと考えていた。

干物女はずっと狭いアパートにいると外界との繋がりがなくなってしまうものなので、時たま外の世界の空気を吸って、他人の服装で季節を感じ、世の中の動きを観察するのだ。


図書館で適当に借りたミステリー小説に夢中になっていると、「トントン」と私の肩を叩く者がいる。知り合いか?と思って見てみると、いつの間にか隣の席に座っていたお兄ちゃんが「これ落ちてましたよ」と小説の返却日の紙を拾ってくれた。

気が付けば、結構カフェは混んで来ていて、両隣誰もいなかったのに席は埋まっていた。

小説に夢中になっていたのと、ワイヤレスホンで外界の音をシャットダウンしていたので、完全に私は異世界にいたのだった。


落としたのは、本に挟まっていた「〇月〇日までに返却してください」という図書館からのお知らせの返却日の紙だった。返却日さえ覚えていれば、捨ててしまっていいものだった。それでも一応お礼は言わないといけない。


「すみません。気が付きませんでした。わざわざありがとうございます」そう言って、お礼をして拾ってくれた男性の顔をみてドキッとした。

 

じょ!?城君!!!???マスクをしているのでハッキリとは分からないが、独特の声。少し擦れたような、でもハスキーではない声。そして、あのキラキラした目。子犬感。間違うはずがない。城君だ!


私は城君に図書館の返却日シートを拾われたんだ!!


本当に城君だろうか?確認するすべもない。隣だし、直接声をかけてみるか?

でもそれだと、ファン丸出しで、城君の居心地が悪いだろう。


どうしよう。どうしよう。と考えているうちに、スマホが鳴った。

?私のスマホじゃなかった。

城君のスマホだ。

「すみません。今すぐ行きます」

それだけ言って、城君は後片付けをパパっと終わらせ出て行ってしまった。


ここで友人がいようものなら

「あれ、絶対城君だよね?そうだよね?」「似てる人じゃないよね?」などと盛り上がっていたことであろう。


しかしここのカフェは老人率が高い。きっと城君のことなんて知らない人たちばかりだろう。

誰ともさっきまでの城君とのやりとりを話せる人もいなく、私は天にも昇ったような気持ちでドキドキが止まらず、マスクの中ではニヤニヤしていた。

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