第14話 玉手箱封印

落ち着け、私。城君の通っている美容院が判明したところで、何もできないではないか。その美容院は一般的なカット料金だった。私の行きつけの美容院と何ら変わりのない料金だ。

しかし、そこの美容院に行ったとして、城君に合える保証はどこにもない。万が一、城君に遭遇したところで、会話など出来るはずがない。


行きつけの美容院で知り合いや、友人と遭遇したとしても、居心地が悪いし、会話など出来ない。それと同じ様なものだろう。


私はネット探偵したところで、骨折り損のくたびれ儲けに終わった、、、。


そうだ。そうなんだよ。都内に住んでいるからと言って、芸能人が多く住むような区でもない限り、偶然出くわすなんてこともないし、美容院が同じだったところで、何も変わらないんだよ。


自分で気づいたはずじゃないか。写真集を見ながら、これは恋ではないと。

若手俳優を応援する、ただの一ファンだと。


さっきまでの深い探求心がサーッと引いてくのが感じられた。


そうだよ。私は43歳の、地味でそこら辺にいるオバサンだよ。しかも仕事のできるワーキングウーマンでもないどころか、3年間無職のニートだよ。半ひきこりのどうしようもない干物女が、何か行動を起こさない限り、否、起こしたとしても何もそこにはないんだよ。


急に虚無感に襲われた私はまたビール缶に手を出していたのだった。

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