第11話 写真集と私

そーっと、そーっと。

薄いビニールに包まれた城君の写真集を見るために、私は今カッターで傷を付けない様に慎重にビニール袋を剥がしている。


よしっ。

ビニールの梱包から出てきた城君の写真集。

写真集に手垢や皮脂が付かないように、液体ソープで手を清めた。

準備は万端だ。


な、なんて爽やかなんだ。眩しい。目がクラクラする。

これが若さってやつなのか!?

オッサンどもが若いアイドルに群がっているのはこういうことなのか!?

いやいや、違う。私は違う。

オタクではない。城君を異性として見ているのではない。

1人の役者として見ているのである。

アイドルに群がっているオッサンどもと同じにしないでほしい。


キラキラしているな。意外と鍛えていないのね。ムッチリ系か?

写真集を出すというのに、鍛えず自然なままとは今時珍しいではないか。

流石、城君。


シャワーを浴びているページ。これを見ていいのだろうか?17歳も年下の子のシャワーのページなんて。いやいや、普通に見よう。なんかさっきから私の心の声が変態っぽくなってきていることに気が付き、我に返った。


我に返ると不思議なもので、粗探しが始まる。

「あー、城君、前髪を下ろして分かりにくくしていたけど、結構きてるかも」

「これは将来、絶対禿げるな」

などと冷めた心の声がどこからか。


それなのに、見入ってしまった。可愛かった。

やっぱり城君は私にとって、若い役者さんであり、可愛らしくて、応援したくなるような子なんだ。


ハマってるとは言え、アイドルを追っかけるような感情ではないことを再確認して、ちょっと安心している自分がいた。


3回目に写真集を見るときは、最早手垢も皮脂も全然気にせずページをめくっている私がそこにいた。

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